あのプーチンを脅かす露「反体制カリスマ」の正体 クレムリンは「現政治体制に対する危機」と認識

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本人の言説にもとづいて答えを出すなら、ポピュリストではない。ナワリヌイは自分が2段階の闘いに身を投じていると、繰り返し強調してきた。反体制の視点に立つ言説が第1段階であり、現代ロシアにおいて権力が形成される仕組みを攻撃する。

この段階での政治は単純だとナワリヌイは主張する。ジャーナリストのエフゲニヤ・アリバーツの言葉を借りれば、「白黒」だと。ナワリヌイは2020年にドイツのシュピーゲル誌にこう語っている。

原理主義的な反体制派との協力にも、なんら問題があるとは思わない。選挙で共産党を支援してもかまわない。私たちが応援する候補者の一人がレーニンのバッジをつけていても、騒ぐつもりはない。

ドイツの制度はちがう。すでに民主主義が根づいていて、右派も左派もその枠組みのなかで闘っている。私の国では、まず政権交代と司法の独立を信じる勢力をまとめなければならない。

その過程の先に次の段階がある、とナワリヌイは考えている。第二段階では、エリート層と一般大衆との粗削りな対立が解消され、“ごく普通の”政治が可能になる。

議会制民主主義制度の政治家だと自認するなら、ナワリヌイは、大衆の「総意」にじかにアクセスすべきだという、ポピュリストの独善的な主張をはねつけるはずだ。彼とそのチームが想像するロシア版議会制民主主義制度において、ナワリヌイの党は複数政党の1つでしかなくなる。

政治環境が“普通”になったら、ナワリヌイは追放?

ナワリヌイは過去に差別主義的な発言をしている。

例えば、主に中央アジアやコーカサス出身者に対して、人種に関する露骨な固定観念にもとづく言動をぶつけている。それに対しては、西側のウォッチャーの批判を集め、一部で祭り上げられているような民主派のヒーローではないとの警告を受けている。

しかし、ナワリヌイは西側の政治家ではない。このテーマを考えるうえでは、ロシアの視点を入れることが重要だ。

たしかに、ナワリヌイの言説はロシア国内でも論争を引き起こしてきた。多くの人権擁護団体も、その理由によりナワリヌイを不安視してきた。ロシア・ナショナリズムの専門家であるアレクサンドル・ヴェルホフスキーは、ナワリヌイは「民族的偏見」を抱いていると語っている。また、ナワリヌイの運動に参加していても、移民に関する立場ではナワリヌイと距離を置く活動家がいる。

しかし、今日の欧米とは違い、ロシアでは人種差別的な言動をしても、革新政治から除外されることはない。

政治環境が“普通”になった暁には、ナワリヌイの追放を求める声も出てくるかもしれない。そんな人たちもこの問題は二次的だと考えている。少なくとも、当面の間は。したがって、自由でひらかれた議論ができる環境が整ったときに、かつての発言を撤回しなければ、“政治家ナワリヌイ”は激しく非難されることになるだろう。

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