「好物は最後に食べる」派の5歳少女に起きた事件 父への食べ物の恨みは、形を変えて今も残る

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さて、ここまでが子ども時代の話である。「中高生の頃は、トラウマも比較的癒えていたんです」と語る香織さんだったが、とあることがきっかけで、大人になってからそのトラウマが再発することになったというのだ。

「20代中盤、すごいよく食べる男性と同棲していたことがあるんです。ある日、彼が飲み会で、楽をしようと思って崎陽軒の6個入りシュウマイを自分用に買って帰ったら、予定より早く彼が帰宅して。それで、テレビを見ていたら、気付いたらシュウマイを4個も食べられてしまったんですよ。

完全にウインナー事件のトラウマが蘇って、『そう言えば、取られるんだ……』って。それ以降は、彼に対しても事前申告するようになりました」

この事件がどれほど影響したのかは定かではないが、彼とは程なくして別れたという。だが、シュウマイ事件については、今も時折思い出すことがあるようだ。

「しかも、その時、彼からは『遅いから食べちゃったよ~(笑)』って言われたんですけど、今思い出してもおかしいと思うんですよね。だってそれって、自分が他の人の分まで食べたことを、私の責任にしてるってことじゃないですか? 人のものを食べておいて、こちらの責任にするなんて、二重に罪を犯しているのと同じですよ」

ホームパーティーで「家主分を確保」の奇行

香織さんの名誉のために断っておきたいが、彼女は決して食い意地の張っている人間ではない。むしろ体型は痩せ型で、話を聞く限り食事量も人並みだ。食い意地が張っているのではなく、『平等に分けること』へのこだわりが異様に強いだけで、彼が食べたのが3個なら、きっとなにも思わなかったはずなのだ。

……きっとそうだ、そうであってほしいと思って伝えてみると、香織さんは「そう! そうなんです!」と嬉しそうな声をあげ(当たってて良かった)、さらにこんな取れたてホヤホヤなエピソードを追加してくれた。

「ちょうど数日前、職場の仲間がホームパーティーに行ったんですけど、来ていた男性がめちゃくちゃ食べる人だったんです。家主入れて5人の会だったんですけど、どう考えても2人で5分の3くらい食べてるんですね。だから、家主の分がなくなると思って取り分けようとしたら、『私は要らないよ! 食べてほしいから呼んでるし、たくさん食べてもらえたほうが嬉しいの!』って言われて。たしかにそうだよなって。

……でも、ダメなんです。頭でわかっていても、均等に分けることを考えてしまう。ピザを切り分けるときに、頭の中で点線を浮かべることってありませんか? 私の場合、あれがどんな食べ物にも浮かぶんです。鍋でも、パスタでも、サラダでも何でも……」

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