日本発「木から作るクルマ」が夢物語ではない理由 セルロースナノファイバー(CNF)に集まる期待
まず、セルロースナノファイバー(以下、CNF)の「セルロース」とは「どんな植物にも含まれている、地球上でもっとも多い炭水化物」のことです。「炭水化物」といえば、お米やパスタなどをイメージする人が多いと思いますが、それらは「でんぷん」とよばれる炭水化物。それに対して、木綿や麻、紙の素材であるパルプ(木材繊維)などは「セルロース」とよばれる炭水化物です。
そして、CNFの「ナノ」とは「10億分の1」を表す接頭辞です。「カーボンナノチューブ」でも登場しましたね。「ナノ」が付いていたら「とにかく細い(小さい)!」ということです。想像するのは困難ですが、念のためお伝えすると、CNFは髪の毛の約2万分の1の細さです。
最後に、CNFの「ファイバー」は「繊維」のことなので、CNFは「セルロースでできた、とっても細い繊維」ということになりますね。
セルロースナノファイバーの特徴は?
CNFとは何かがわかったところで、その特徴を確認してみましょう。
まず1つ目は「原料の調達が容易」です。現在、CNFの多くはパルプを原料に作られています。国土の7割が森林に覆われ、森林資源が豊富な日本にとって、パルプの調達は容易だからです。
もちろん、先述の通りセルロースはすべての植物に含まれているため、パルプ以外もCNFの原料になります。竹だって、木綿だって、みかんの皮だって、植物資源すべてがCNFの原料になり得るのです。例えば、鹿児島県薩摩川内(さつませんだい)市では、放置された竹林が問題となっており、そこから産業を産み出すための取り組みとして、サッシや外壁の塗料などの住宅建材に「竹から作るCNF」が活用されています。
そして2つ目は「細いのに強い」です。ちょっとだけ、想像してみてください。太いロープと髪の毛、ともに30㎝だったら、どっちが絡みやすいですか? 当然、髪の毛ですよね。細いほうが、絡みやすく、繊維同士の接点が多くなります。CNFは髪の毛よりもっと細いので、繊維同士の接点が非常に多くなります。そしてその接点で、繊維同士が比較的強い結合を作るのです。結合が強く、その数が多い。これによりCNFは「重さが鉄の5分の1、強度が鉄の5倍」という驚異的な素材になっているのです。
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