日本発「木から作るクルマ」が夢物語ではない理由 セルロースナノファイバー(CNF)に集まる期待
CNFの活用が本格化し、量産化が進むと、炭素繊維の6分の1程度のコストでさまざまな製品材料になるといわれています。将来、CNFが炭素繊維に替わる素材になっているかもしれませんね。
資源に乏しい国から資源大国ニッポンへ
始まりは、1996年。「台風の強風でも多くの木は倒れない。その強さの秘密はなんなのか」という疑問が、1人の博士の中に芽生えます。その博士とは、京都大学教授の矢野浩之博士です。
矢野博士は試行錯誤を重ね、2005年、鋼鉄並みの強度をもつCNF由来の素材を作ることに成功。しかし、需要の多かった「CNFをプラスチックに混ぜて作る強化プラスチック」の量産には莫大なコストがかかり、実用化を妨げます。それから10年後の2015年、強化プラスチックを簡単に作る工程「京都プロセス」を開発。実用化が現実的なものになりました。
そして2016年には、環境省が「世界初! NCV(ナノ・セルロース・ビークル)プロジェクト」を始動。そして2019年。CNFはスーパーカーとなって、私たちの前に現れたのです。現在も、国内の大学や研究所、自動車部品メーカーをはじめとした様々な企業が一体となり、その実用化に取り組んでいます。これは「木の国ニッポン」が得意な自動車分野において低炭素社会を切り開き、持続可能な社会につなげていくための挑戦なのです。
日本の国土の約70%が森林に覆われており、そのうち約40%は持続生産可能な人工林。
しかし現在、伐採にかかる費用が高いことや人手不足を理由に、この人工林が使われなくなっています。これを上手く活用すれば、日本で1年間に消費される石油由来のプラスチックの約1・5倍ものCNFが生産できるといわれています。これが実現すれば「資源に乏しい日本」から「資源大国日本」へと変貌を遂げることができるのです。
人間は、自然と共存しなくては生きていけません。「自然を壊さない程度に活用し、自然に返せるものを作って使う」。これが可能になったとき、本当の意味での持続可能な社会になっているのではないでしょうか。太古の時代から木とともに生きてきた日本なら、きっとそれができるはずです。
前回:皮膚に粘着剤なしで貼れる超薄膜がやたら凄い訳(12月13日配信)
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