外貨が足りなくてワクチンの入手に苦労する国があるいっぽうで、わが国はその程度は余裕で買えてしまう。なおかつ貿易収支は赤字にならない。外貨を稼ぐ力は健在なのである。貿易動向調査の商品別予測を、細かく読み込んでみるのも一興であろう。
例えば「日本経済の4番打者」と呼ばれる自動車産業。その自動車業界においては「EV化が進めばトヨタの天下も終わる」、とか「サプライチェーン問題の影響から抜けられない」、といった懸念をよく聞く。
ところがその自動車輸出は、2020年度の9.5兆円から2022年度には12.0兆円に増える見込みだ。現下の半導体不足も、2022年後半には解消されるというのが業界ヒアリングの結果である。そしてアメリカと中国、東南アジア経済などの回復を見込んで、自動車部品も同2.9兆円から3.7兆円へ伸びて、2019年度水準を上回る見込みである。
金額は小さいけれども、食料品輸出が1兆円の大台に手が届きかけている点も興味深い。日本の食品輸出においては、三陸沖などで獲れる高級魚介類が売れ筋商品だが、2020年度は中国向け輸出が検査強化のために落ち込んでいた。かの国では、コロナは武漢で発生したものではなく、冷凍食品によって海外から持ち込まれたことになっているからだ。しかるに最近はその警戒も緩みつつあり、2021年度、2022年度は持ち直す見通しである。やっぱり、高くてもうまいものは売れるのである。
日本の経常黒字は2022年度も19.4兆円?
さて、貿易収支に旅行収支などのサービス収支、さらには投資による収益である所得収支を足し合わせて計算すると、ボトムラインとなる経常収支は2021年度16.3兆円、2022年度19.4兆円の黒字となる。あいかわらずGDP比3~4%の黒字が続き、日本経済にはコンスタントに海外のマネーが入ってくることになる。
「日本は高齢化の進展に伴って、いずれは貯蓄が減って経常赤字国に転落する」という予測は、古くは2000年頃にささやかれ、あるいは震災直後の頃にもよく聞いたものである。そのたびに筆者は、「足元の貿易データを見る限り、日本経済の黒字を稼ぐ力は健在なようですよ」と言い続けてきたものである。
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