さらに来春以降も安定的な増加が続くので、2022年度には輸出と輸入がそろって過去最高を更新する見込みである。
ちなみに輸出はリーマンショックの直前、自動車輸出が絶好調だった2007年度の85.1兆円がピークであり、輸入は東日本大震災の直後、原発がすべて停止していたところへ、資源価格暴騰というダブルパンチをくらった2013年度の84.6兆円が最大値である。
余談ながら、日本政府がCO2削減の基準年を2013年度に置いているのは、そういう事情による。化石燃料をガンガン炊きまくった2013年度に比べれば、普通にしているだけでCO2は減るのである。実は2019年度時点で、温暖化ガス排出量はすでに14%も減っている。このままわが国の低成長と人口減少が続いたら、本当に2030年度には46%減が実現してしまうかもしれない。もっともそれが、日本人にとって幸いなことかどうかは不明なのであるが。
念のために申し添えておくと、これらの数値はあくまでも予測であって、いくつかの前提条件に基づいている。世界各国の経済環境は、IMF(国際通貨基金)の世界経済見通しを基準としている。また、為替レートは2021年度1ドル=111円、2022年度は1ドル=112円を前提とし、原油入着価格は2021年度1バレル=77ドル、2022年度1バレル=70ドルとしている。
2021、2022年度とも貿易収支は「黒字」を維持?
ところで上記の予測においては、2021年度と2022年度はそれぞれ輸入が輸出を上回るので、単純計算すれば貿易収支は赤字になる。しかるにこれらは通関統計のデータなので、輸入はCIFベースで保険料や海上(航空)運賃を含んだ数値となっている。これを輸出と同じFOB(本船渡し条件)価格に割り引くと、IMF基準の貿易収支は2年連続でわずかながら黒字となる見込みである(2021年度4280億円、2022年度1.7兆円)。
これがいかにすごいことか、元担当者としてはつい説明したくなる。この国は毎年、鉱物性燃料を大量に輸入している。したがって国際的なエネルギー価格の影響を受けやすい。2020年度の原粗油は約8.8億バレルの輸入量なので、原油が1バレルにつき1ドル上がればそれだけで1000億円の負担増となる。さらに原油価格の上昇は、LNGや石油製品価格にも連動する。今年のように、原油価格が上がった年はそれだけで大変なのである。
さらに2021年度は、ワクチンの輸入という出費も生じている。あまり知られていないことながら、2020年度の医薬品輸入は3.2兆円もあって、すでに原粗油に次いで第2位の輸入品目となっている。これに加えて、今年度は合計1兆円程度のワクチン輸入が加わった。
無料会員登録はこちら
ログインはこちら