新庄剛志「部下のやる気を引き出す」掌握術の本質 破天荒なBIGBOSSの裏に正統派のマネジメント
まずは選手の才能を尊重して楽しく自由にやらせてみる。それでうまくいけばOKだが、うまくいかなければコーチが積極的にアドバイスを送る。これはプロ野球界で長年「こうすべし」と言われながらもけっきょくやれない指導者が多い方法であり、新庄さんは最初にそれを明言したのです。
新人選手たちにとっては、「伸び伸びやれる」だけでなく、「自分で考えなければいけない」という責任を背負うことになります。いまだプロ野球チームだけでなく一般企業も、「上司の指示は絶対」という押しつけ型の指導が多いと言われ、一方の若手も「指示待ち」と言われがちなだけに、来年ファイターズの新人選手が結果を残したら、世間にも影響を与えるでしょう。
トライアウト視察による絶大な効果
新庄さんは12月8日に行われた12球団合同トライアウトにも参加。1年前はプレイヤーとしてプロ野球チームへの入団を目指した場でもあり、大きな話題を集めました。
テレビ中継のインタビューに応じた新庄さんは、「全員ほしいですね。(昨年挑戦したので)気持ちわかりますし、少しでもよいところを見てましたね」と、まずは選手の気持ちに寄り添うコメント。注目の選手を聞かれると、「(元阪神の)高野くんのカットボールが目についたのと、(オリックスの)金田くん、野手では(楽天の)中村くん、(巨人の)山下くん」と、誤解を恐れず次々に名前を挙げたところも新庄さんらしさが表れていました。
「ほぼほぼ稲葉GMに(任せています)。僕は案を言って。見る目はGMのほうがあるんで」と決定権がないことも明かしていましたが、もし入団できなくても名前を出してもらえたことは選手たちにとって励みになるでしょう。
ただ、ここでも新庄さんは、「まだアピールが足りない。もっとアピールしてほしい」とアドバイスのようなエールを送っていました。近年トライアウトは、「再契約される選手は事前に決まっている」「最後のユニフォーム姿を見せる儀式になった」などと揶揄されることも多いだけに、本気で熱い言葉をかけてくれる新庄さんに選手たちは救われたのではないでしょうか。
もちろんその温かいコメントはファイターズの選手たちも見聞きしているはずであり、新庄さんはそれ以前にも「『いい選手を獲ってきて』という野球はあんまり面白くない」と選手の成長を信じ、大型補強を否定していました。これらのコメントを積み重ねていくことで選手たちが「ウチの監督は本気で向き合ってくれる信頼できる人」という思いを深めていくことが推察されます。
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