新庄剛志「部下のやる気を引き出す」掌握術の本質 破天荒なBIGBOSSの裏に正統派のマネジメント

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このエピソードも一般企業に置き換えることが可能。たとえば、業績を支えるエース社員に「現状の成績を落とさないでほしい」ではなく、「あなたならもっとできる」と信頼と期待の声をかけられるマネージャーのほうが結果を残せるでしょう。

キャンプの最終日、締めのあいさつを任された渡邉諒選手は、「来年は新庄監督とともにプロ野球界を引っ張っていきましょう。そのためにもここからの2カ月が大事です。時間を大事に使い、1人1人が自覚を持ち、レベルアップをして来年の春のキャンプに臨みましょう」とコメントしていました。「個人やチームを」ではなく、「プロ野球界を」と言っていたところに、早くも意識が変わりはじめ、新庄さんの言葉が浸透していることがわかるのではないでしょうか。

新人が伸び伸び働けない日本社会

新庄さんは12月5日の新入団選手記者発表会見にも同席。冒頭のあいさつで、「あまりプロ野球自体が好きではなかった」とコメントして驚かせた自身のエピソードを持ち出し、「そういうぶっ飛んだ人間が監督になれる。今日はどれだけぶっ飛んだコメントが聞けるか楽しみにしています」と新人選手たちをあおりました。

その後、新人選手たちのコメントを聞いた新庄さんは、「アピールが甘いですね。1年間2軍ですね、これは」と明るくダメ出し。もちろんそれだけではなく、「スタートラインは1軍も2軍も横一線。『早く1軍に上がれたらいいなあ』じゃなくて、『必ず俺が開幕戦のグラウンドに立つ』という強い気持ちを持ってないといけない。そのためにはつまらない練習でも毎日地味に積み重ねること。それが必ず大きく花を咲かせますから」と熱いメッセージを送りました。

この言葉で新人選手たちは「1軍を狙ってもいいんだ」と本気で思えたのではないでしょうか。どの組織でも新たに加わった人は遠慮しがちなうえに、「出る杭は打たれる」という言葉があるように伸び伸びと振る舞えず、「自分のスキルを発揮できない」「スタートダッシュできない」という傾向があるものです。新庄さんはそんな日本人の気質をわかったうえで、このようなメッセージを送ったのでしょう。

その後、新人選手へのエールを求められた新庄さんは、「楽しんじょう!」とダジャレで笑わせたあと、「苦労を苦労と思わず、楽しんでほしい。楽しむことの大切さをわかってほしい。あとは、1年目はコーチの言うことを聞かないでほしい。彼らは実力でプロ野球に入ってきている。まずは自分のパフォーマンスを思い切り出してほしいし、コーチにも『いろいろアドバイスするな』と言っている。自分たちでレギュラーをもぎ取ってほしい」と語りました。

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