商船三井流「ばくち経営」、新社長が挑む勝率上げ

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はた目に大ばくちと映った大量発注は「鈴木社長(当時)や小出三郎・鉄鋼原料船部長(当時、現・第一中央汽船社長)の大英断。しかし決断に至るまでに緻密な情報収集があった」と安岡専務は振り返る。

商社出身で鉄鉱石など鉄鋼原料(鉄原)に詳しい中国人社員を00年夏に北京に配置し、中国の資源需要を徹底的に探った。「北京には定期船の担当者が行くことが常識だった日本の海運会社の中で、鉄原の担当者を置くのは異質だった」(安岡専務)。同業他社が北京に鉄原担当者を置くようになったのはそれから3、4年後のことだ。

情報不足での失敗を糧に 現場から直接吸い上げへ

「中国のミル(鉄鋼メーカー)が荷物を動かし始めていたのに、なぜか運賃市況は低迷していた。中国ミルに聞くと先々のすごいボリュームの生産計画を言うが、マーケットはその真偽を測りかねていた。中国の情報を集めることで、『計画が100%実現しないにしても、中国の鉄鋼生産力は爆発的に伸びる』という確信が強くなった」(武藤社長)。

一方で苦い経験もある。「米国が年1000万トンのLNG(液化天然ガス)輸入を5年で5倍にする」という04年の情報を基にLNG船を数隻発注したが、米国の輸入量は現在も年1000万トン程度だ。原油高騰で、米国内のガス田開発が想定以上に進んだためだ。「もっと情報収集をしていれば、LNG船の発注を抑えられたはずだ」(武藤社長)。

リーマンショックを読み切れなかったことすら武藤社長は悔やむ。

「社内で(米国の住宅ローンバブルが崩壊すると)警鐘を鳴らす声もあったが、2010年問題(10年にバラ積み船が世界的な供給過剰になる懸念)のほうが念頭にあり、軽く見ていた。だが、ケープサイズの運賃が1日26万ドルというのは今思えば行き過ぎだった。自動車船が30隻建造中だが、あのとき発注をやめておけば、今タダのような値段で買えていたし、大手他社を買収できたかも知れない。『失敗を恐れるな』と日ごろ言ってきた手前、新規の発注を抑え切れなかった」

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