1万個売り上げた「ご当地レトルトカレー」の正体 冷たいままおいしく食べられる「消防カレー」
地元で採れた野菜や肉、魚介などの特産品を使ったご当地カレーで町おこしをする自治体は、全国で100以上あると言われている。さらに、ご当地レトルトカレーとなると、全国で3000種類も作られているという。
しかし、ご当地カレーと聞いて、すぐにイメージが浮かぶのはどれだけあるのだろう。筆者が住む愛知県の某市もその昔、特産品を使ったレトルトカレーを開発したことがあるが、地元ですら広まることはなかった。
全国のご当地カレーのOEM製造を手がけるオリエンタル(愛知県稲沢市)によると、「5000個を1ロットとして製造するのですが、追加で注文をいただくことはほとんどありません。つまり、1回こっきりで終わるケースがほとんどです」(広報)とか。
賞味期限の長いレトルトカレーでも5000個を完売するのは自治体にとってハードルが高いようだ。そんな中、1万食を完売し、さらに6500食の追加注文をした、ご当地レトルトカレーではベストセラーとなっている商品があるという。それが愛知県の南部に位置する幸田町の「愛知・幸田の消防カレー」(以下、消防カレー)だ。
レシピは消防署員の賄いがベース
幸田町の人口は42625人(12月1日現在)。特産品である筆柿やハウス栽培のイチゴなど農業のほか、多くの工業団地があり、自動車関連産業を中心に製造業も盛んな町である。
「消防カレーのプロジェクトは、幸田町役場産業振興課と幸田町消防本部によって、2019年5月から始まりました。本業を持ちながら訓練に励む消防団員を応援したいという成瀬敦町長の思いがきっかけでした」と、幸田町役場産業振興課の春日井幸弘さんは振り返る。
海上自衛隊では、長期にわたる海上勤務で曜日の感覚が失われることから、毎週金曜日にカレーを食べる習慣がある。それと同様に、幸田町消防本部に勤務する署員もカレーと深いつながりがある。幸田町消防本部庶務課の新實直哉さんはこう話す。
「署員たちは火災による消火活動や救急搬送で24時間いつでも駆けつけねばなりません。交代制の勤務の中で、食事も彼ら自身が作っています。食事中に出動することもあり、署に戻ってから再び食事をするわけですが、カレーであれば冷めても食べられます。食器の後片付けも楽ですし、署員の間でカレーは人気なんです」
無料会員登録はこちら
ログインはこちら