1万個売り上げた「ご当地レトルトカレー」の正体 冷たいままおいしく食べられる「消防カレー」
消防カレーは、火災現場でも怯まず、果敢に消火活動を行う消防署員の原動力であるという意味から“火事場のチカラメシ。”というキャッチコピーが付けられた。また、消防車の前で楽しそうにカレーを食べている消防署員をメインビジュアルにしたポスターも制作した。
こうして2020年4月、幸田町役場内の食堂『コウショク』(現在改装中のため休業)と道の駅『筆柿の里 幸田』で消防カレーの販売がスタートした。
「スパイスカレーという珍しさもあって、評判は上々でした。ポスターを見て注文される方も多かったですね。役場や消防署にも多くの問い合わせがありました。反響は予想以上に大きく、レトルトカレー製造のプロジェクトを立ち上げました」(春日井さん)。ところが、レトルト化するにあたり、「温めずに冷たいままおいしく食べられる」というコンセプトが足枷となった。
豚肉の脂が溶け出す融点が40〜46℃と高いので、温めずに開封すると油脂が固まってしまうのだ。使用する豚肉の部位を脂の少ない肩ロースに変えるなど、試作と試食を繰り返して1年がかりでようやく完成させた。
発売からわずか2カ月半で5000個が完売
しかし、冒頭で書いたとおり、5000個で1ロット。販路は今のところ道の駅のみ。売れる保証はどこにもない。何しろ、製造にかかる費用の原資は町民が納めた税金なのだ。
「正直、5000個も売れるわけがないと思っていました。ただ、レトルトゆえに賞味期限が2年と長いので、売れ残ったら『災害時の非常食として作った』という言い訳も考えていました」(春日井さん)
しかし、実際に蓋を開けてみると、6月半ばには完売。7月末に5000個を追加発売するも、10月中旬に完売。10月末にさらに6500個を発注したが、これも年度内に完売する見込みだという。
大ヒットとなったのは、2018年から幸田町が参画したフィルム・コミッションも要因の1つ。ドラマや映画、CMなど映像作品のロケ地の誘致に積極的に取り組み、竹中直人と山田孝之、齊藤工が監督を務めた映画『ゾッキ』や東海テレビ『最高のオバハン 中島ハルコ』のロケ地として選ばれたのだ。
撮影が始まると、役者やスタッフが休憩時間や撮影の合間に食べる、いわゆる“ロケ弁”に消防カレーを振る舞った。役者たちは写真を撮り、インスタなどのSNSにアップした。それを見たファンが道の駅を訪れて購入したのだ。
「いちばん反響が大きかったのは、大地真央さんのインスタでした。今年3月、東京出張の折に東海テレビの東京支社へ消防カレーを持参してお礼に伺ったんです。偶然にも、その場に『最高のオバハン 中島ハルコ』で主役を務めた大地真央さんがいて、直接お渡しすることができたんです」(春日井さん)
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