日本人は急速な人口減の深刻さをわかっていない 今後10年で1100万人減の現実にどう対処するか

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2040年の集落には休耕地に太陽光パネルが設置され、農作業用の軽トラックや乗用車はすべて電気自動車となっていて発電と一体化した集落のエネルギーグリッドを形成しています。これら農村の電気自動車はロボタクシー網も形成しており、集落の住民はみなスマホでこれらの乗り物を共有し、運転手不在でも買い出しに出られるようになっています。

無人駅の近くに一軒だけある小さな病院は5Gネットワークで大都市の大病院とつながっていて、住民は地元の病院からネットワークを通じて遠隔医療を受けることができます。ドローンによる配達も普通に行われており、農村に住んでいても市町村の中心部からコンビニ弁当やウーバーイーツによる出前をドローンで取り寄せることが可能です。

農作業もDX化が進んでいて、日ごろの見回りはセンサーや監視カメラ、パトロール用のドローンが高齢化で不足する人手を代行してくれます。集落にはかつてはぽつぽつと空き家があったのですが、最近では大都市の企業でリモートワークをする社員と、遠隔授業を受けるその家族がそれらの家屋を借りて住むようになり、集落の人口減少には一定の歯止めがかかるようになっています。

こういったビジョンはこれから20年後という時間軸であれば腹落ちする内容だと思います。だとすればこれから20年かけて徐々にそちらに向けて進むことで来るべき人口減少時代を明るいものに変えることができるはずです。

具体的にはJA主導でこういった社会変革を行うのが望ましいと思いますが、農村部のエネルギーグリッド化、5Gによる農業のDX化はすぐにでも始められますし、ロボタクシー出現までの間のつなぎ政策として、今でもできるカーシェアの全面解禁など手をつけられる政策はたくさんあると思います。

これから20年で2000万人規模の日本人がいなくなる

いずれにしても1つだけ確実に当たる未来予測があります。それは2030年、2040年の日本人人口が1000万人、そして2000万人規模で減少していくということです。

指をくわえてそれを見ていれば日本社会も沈没していく。働き手が不足して高齢者が孤立する人口ピラミッド崩壊社会が出現するのです。それに歯止めをかける有効な手段は、外国人労働者を増やすことと、農村部から先にデジタル未来都市化と進めていくこと。

その危機感を共有するには、冒頭の「日本の総人口が5年前より94万人余減少」という情報開示のあり方は、問題を矮小化するという意味でよくないやり方だったのではないかと私は思うわけです。テレビドラマに引っ張られての感想かもしれませんが皆さんはどう思われますか。

鈴木 貴博 経済評論家、百年コンサルティング代表

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すずき たかひろ / Takahiro Suzuki

東京大学工学部物理工学科卒。ボストンコンサルティンググループ、ネットイヤーグループ(東証マザーズ上場)を経て2003年に独立。人材企業やIT企業の戦略コンサルティングの傍ら、経済評論家として活躍。人工知能が経済に与える影響についての論客としても知られる。著書に日本経済予言の書 2020年代、不安な未来の読み解き方』(PHP)、『仕事消滅 AIの時代を生き抜くために、いま私たちにできること』(講談社)、『戦略思考トレーニングシリーズ』(日経文庫)などがある。BS朝日『モノシリスト』準レギュラーなどテレビ出演も多い。オスカープロモーション所属。

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