トー横キッズが歌舞伎町に居場所求める本当の訳 少年少女たちのリアルに開沼博が迫る【前編】

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開沼博(かいぬま・ひろし)/東京大学大学院准教授・社会学者。1984年生まれ。東京大学卒。同大学院博士課程単位取得。立命館大学准教授などを経て、2021年東京大学大学院情報学環准教授。近著に『日本の盲点』(PHP新書)。「漂白される社会=日本」をテーマに表裏、左右問わず縦横無尽にフィールドワークを続け、現代日本の闇を追い続ける(筆者撮影)

R君:最近は有名になりすぎて、観光名所化している部分もあるので普通の小中高生もファッション感覚で来るようになっていますが、コアなトー横民の多くは、もともと引きこもりだったり、不登校だったり、発達障害だったり家庭環境が荒れていたりで、全員、はっきり言ってメンヘラ。

あとはコロナ禍におけるステイホームの影響で親が1日中家にいるようになり、それがうざくて逃げ出した子もいます。だから、捜索願が出ているような家出少女とかも多いです。で、カブキ周辺の安ホテルを取って長期間滞在しながら、界隈で遊んでいる。コアなトー横民はそんな感じかと思います。

開沼:トー横界隈自体はリアルな現象ではあるけれど、その背景にはSNSがあって、それを見て同じようなタイプの子が集まってきたんだと。

R君:はい。リストカットして、地雷系ファッションが好きで、心を病んでるみたいな子たちって、これまでもネットやSNSの中ではわりと濃密につながっていたんですが、トー横界隈というリアルな場所が誕生したことで、自分も行ってみたい、そこで仲間を作りたいと集まりだした。僕自身もツイッターで界隈のことを知るまでは、ずっと家にこもってSNSやゲームばかりしていました。

「自己承認欲求かな」

開沼:引きこもって、SNSやネットでつながっていればいいやという人も多いじゃないですか。なぜR君たちはあえてリアルな場に出てきたのですか。

R君:自己承認欲求って言うんですか? そういうことかなと自分では思ってます。

開沼:自己承認欲求? でも本当に病んでいたり引きこもったりしている人が、わざわざ繁華街に出てくるんですかね。

R君:うーん、人にもよるけど、トー横界隈に来るようなメンヘラの子たちって、家庭とか学校とかっていう場になじめないだけであって、自分と同じような感性の子たちとはなじめるし、関わり合いを持ちたいと思っているんです。で、実際に来てみると、自分と似たタイプの子もいるし、異性からもチヤホヤしてもらえたりするわけです。そうするとやっぱり気持ちがいいし、居心地がいいんじゃないでしょうか。

開沼:なるほど。じゃあ、いわゆる昔の暴走族とかチーマー、ギャングみたいな「集団」とは違うと。

R君:チームとか組織みたいな概念とはかけ離れた存在だと思っています。メンヘラの若い子たちの緩やかなコミュニティーといったところですかね。

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