岸田内閣は財政健全化目標を先送りするのか コロナ禍でも好調な税収が意味すること

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2021年度下半期に、何らかの理由で税収がペースダウンしたとしても、国と地方の税収が109.8兆円(2020年度決算比5.8%増)を上回れば、前述の結論は覆らず、保守的な経済前提でも2025年度にはPB黒字化が達成可能となる。これは、増税によるものではなく、試算の発射台となる2021年度の税収が7月試算より多いことによるものである。

こうすれば、目標の先送りは必要ない

もちろん、財政健全化に向けては、まだまだ楽観できないことが多い。上記の試算は、中長期試算が想定している範囲内に歳出を抑えなければ実現しない。だから、2010年代後半に行ってきた歳出改革は、2020年代前半にも継続して行うことが求められる。コロナ禍といえども、国民は税金の無駄遣いを望んではいない。

また、冒頭述べた2021年度補正予算のように、棚ぼた式の税収増を、安直に財政出動に使い続けていては、いつまで経っても財政収支は改善しない。コロナ禍の経済的打撃が収まれば、直ちにそのための対策費はゼロベースで見直し、恒久化させないことが必須である。

また、大規模な恒久減税を行って税収基盤が損なわれれば、身もふたもない。2010年代に構築してきたわが国の税制を維持することが欠かせない。

保守的な経済前提に立ちつつ、これまで行ってきたような無理のない歳出改革を行えば、2025年度の財政健全化目標を先送りする必要はないのである。

土居 丈朗 慶應義塾大学 経済学部教授

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どい・たけろう / Takero Doi

1970年生。大阪大学卒業、東京大学大学院博士課程修了。博士(経済学)。東京大学社会科学研究所助手、慶應義塾大学助教授等を経て、2009年4月から現職。行政改革推進会議議員、税制調査会委員、財政制度等審議会委員、国税審議会委員、東京都税制調査会委員等を務める。主著に『地方債改革の経済学』(日本経済新聞出版社。日経・経済図書文化賞、サントリー学芸賞受賞)、『入門財政学』(日本評論社)、『入門公共経済学(第2版)』(日本評論社)等。

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