そこで、中長期試算におけるベースラインケースに基づき、経済成長についてより保守的な見通しに立って、PBの動向を見るとどうなるか。さらに、税収についても、経済成長率よりも若干高め(経済成長率の1.1倍程度)で伸びると仮定するとどうなるか。この1.1という値は、専門用語で税収弾性値と呼ばれるもので、これを4と見込む見方もあるが、それはかなり楽観的である。
2021年度の税収増は、2020年度比で10.2%増となるところから、2025年度に向けた税収動向を測ってみよう。最新版の中長期試算である今年7月試算では、2020年度の税収は、国の一般会計税収が60.8兆円、地方税収(普通会計)が43.0兆円、合計103.8兆円だった。地方税制は、国の税制とほぼ類似しているから、同率の増加率と見込むと、2020年度決算から10.2%増となる2021年度の国と地方の税収は、114.4兆円と見込まれる。ちなみに、今年7月の中長期試算での2021年度の同税収は、98.2兆円だった。
ここから、同試算でのベンチマークケースの名目成長率と、税収弾性値を1.1と想定すると、2025年度の同税収は124.7兆円となると見込まれる。この2021年度から2025年度までの同税収の年平均増加率は、約2.2%だから、ベンチマークケースで想定される2%前後の名目成長率と平仄が合っている。
同試算でのベンチマークケースでは、前述のように、2025年度のPBは9.7兆円の赤字だった。その収支に含まれている国と地方の税収は、111.7兆円である。
低めの経済成長前提でもPBは黒字化する
要するに、2021年度の税収を足元で起きている実績を踏まえて補正したうえで、より保守的な経済前提で2025年度の税収を推計すると、2025年度の税収は111.7兆円から124.7兆円へと13.0兆円多く見込まれるものとなる。この額は、同試算が推計した9.7兆円のPB赤字を上回る。つまり、これだけの税収が得られれば、より保守的な経済前提でも、2025年度にはPB黒字化の目途が立つことになる。
だから、2025年度のPB黒字化を凍結する必要はないのである。
別の言い方をすると、2021年度の好調な税収のインパクトはそうとう大きい、といえよう。
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