確かに、新型コロナの悪影響は深刻だが、必ずしも経済全体におしなべて及ぶような影響ではないようである。コロナ禍でも、過去最高益を更新する企業も少なくない。
法人税の場合、企業収益が二極化しても、それが必ずしも税収減につながるわけではないようだ。というのも、平時でも法人の7割前後は法人税を納付していない。残り3割の法人が法人税を納付するが、その納付額は法人所得(企業の利益)に比例する。
だから、平時から利益を計上して法人税を納めている企業が、これまで以上に大きく儲かれば、法人税収が増える。その際、平時から赤字企業で法人税を納めない年が多い企業の業績が悪化しても、法人税収には響かない。2021年度は、今のところ、こうした二極化が起きていて、確かに業況が悪い企業も多いが、最高益を出す企業はより多く法人税を払うという現象が、前述した税収に現れたと考えられる。
コロナ禍でも好調な税収は、今後のわが国の財政運営を、どう左右するだろうか。
財政健全化目標の先送りを示唆する岸田首相
その1つに挙げられるのは、財政健全化目標の再検討である。菅義偉内閣の下で6月18日に閣議決定された「骨太方針2021」には、堅持するとした2025年度の財政健全化目標(国と地方のプライマリーバランス<PB>の黒字化)について「本年度内に、感染症の経済財政への影響の検証を行い、その検証結果を踏まえ、目標年度を再確認する」と明記されている。岸田首相は総裁選でこの財政健全化目標の先送りを示唆し、自民党内には目標凍結を求める声もある。
好調な税収増は、財政の検証にどう影響するのか。現時点で考えられるところを示そう。
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