左傾化する若者「ジェネレーションレフト」の祖先 東京大学・中野教授に聞くアメリカ史(後編)

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――一方で、かつてニューレフトの運動に参加した人たちはどこへ行ってしまったのでしょうか。

ニューレフト運動で挫折した人たちの中には、「大きな政府」への反発から、1980年代以降、リバタリアン(自由至上主義者)になる人も少なくないと思います。しかし、かつてのニューレフトと現在とのつながりという意味でより重要なポイントになるのは環境問題です。

環境保護運動が現在の左派へ続く主な経路に

環境保護は1960年代に大きく発展する市民運動なのですが、共和党優位の時代が続く1970年代以降にむしろ勢いを増していきました。この時期のアメリカを席巻する新自由主義や新保守主義は、市場経済や個人の選択を第1と考える「小さな政府」指向であり、社会問題への関心は基本的に希薄です。しかし、そうした時代のひとつの例外はこの環境問題だったと思います。現在の環境省を創設したのはニクソン政権だったのは象徴的です。

今年10月にアメリカ・ワシントンDCで行われた気候変動集会(写真・Eric Lee/Bloomberg)

実際、環境保護運動は、かつてニューレフトだった人たちの受け皿にもなったように見えます。反核・反原発や土壌汚染など公害問題は新しい左翼政治の争点になっていきます。また、現在、自らを「民主社会主義者」と名乗るアレクサンドリア・オカシオ=コルテスなど若い世代の民主党左派が、グリーンニューディールを唱え、気候変動問題への対応に強くコミットしていますが、ここにニューレフトから現在の左派運動へと流れ込む1つの経路を見出すことは可能でしょう。

――では、現在のリベラルや左派の特徴はどんなものと考えたらいいですか。

かつて、その人が保守かリベラルかというとき、人種や性別、居住する地域など社会的な属性が大きく影響する傾向がありました。確かに今でも、共和党の支持者は「白人の特権」を非難する批判的人種理論に反対の人が大半で、その点が民主党支持者との分断線にもなっています。しかし、民主党支持者の中を見ると、昨今かなり、属性横断的となっています。特に左派傾向の強いミレニアル世代やZ世代は40%以上が非白人で、性別や肌の色にこだわりが少ないといわれます。

ただ、リベラルの内部にも社会福祉や所得再分配の在り方をめぐって、ほとんど党派的と言えるような対立があります。先ごろ成立した、バイデン肝いりのインフラ投資法案は民主党左派の支持が得られず、一部の共和党員の助けを借りねばなりませんでした。他方、サンダースやオカシオ=コルテスらが推進する社会保障大規模歳出法案(医療負担軽減、育児支援、気候変動対策)に対する、民主党穏健派の態度は冷ややかで、法案成立の見通しはなお不透明です。ここにももう1つの分断があるように見えます。ミレニアル世代は最も人口の多い世代です。今後、彼らが社会の中心を占めるようになったとき、アメリカ政治にどのような変化があるのかは興味深いです。

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