なにわ男子が関西系なのに「キラキラ路線」の理由 BTSの一大ブームで「男性アイドル界」は過渡期

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男性アイドルの世界が、いま大きな過渡期に入りつつあることは明らかだ。その直接の原因は、BTSをはじめとしたK-POPグループの世界的成功によるグローバル化の流れの高まりである。

それに触発されるように、日本でもボーイズグループのオーディションが盛んになった。たとえば、韓国のオーディション番組を元にした『PRODUCE 101 JAPAN』やSKY-HIが主催した『THE FIRST』がそうである。そこからすでにJO1、INI、BE:FIRSTといったボーイズグループが誕生し、人気を集めている。

ジャニーズも、そうした大きな潮流のなかで、世界を視野に入れた活動を加速させている。ここ数年のインターネットへの積極的な進出、パフォーマンス重視の傾向、現役ジャニーズたちの世界を意識したような発言などは、その一端である。

垣間見える「日本のアイドル」の自負

だが他方で、K-POPなどの人気は、若い世代を中心に日本でも広く浸透してきている。それは、日本において男性アイドルの分野をほぼ一手に引き受けてきたジャニーズにとって、他人事ではないだろう。こうした状況を踏まえたとき、AKB48のケースのように、関西系ジャニーズを強化することによって国内におけるジャニーズ全体のさらなる活性化を図るのは、ある意味必然的な流れであると思える。

また、「初心LOVE」のどこか歌謡曲的な懐かしさを感じる曲調からは、「日本のアイドル」としてのジャニーズの自負も垣間見える。その意味では、今回のなにわ男子のCDデビューには、ジャニーズ全体の活性化という単なる戦略的意味だけでなく、ジャニーズのアイデンティティの再確認という意味合いも潜んでいそうだ。

太田 省一 社会学者、文筆家

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おおた しょういち / Shoichi Ota

東京大学大学院社会学研究科博士課程単位取得満期退学。テレビと戦後日本社会の関係が研究および著述のメインテーマ。それを踏まえ、現在はテレビ番組の歴史、お笑い、アイドル、歌番組、ドラマなどについて執筆活動を続けている。著書として『攻めてるテレ東、愛されるテレ東』(東京大学出版会)、『平成テレビジョン・スタディーズ』(青土社)、『テレビ社会ニッポン』(せりか書房)、『芸人最強社会ニッポン』(朝日新書)、『SMAPと平成ニッポン』(光文社新書)、『中居正広という生き方』『木村拓哉という生き方』(いずれも青弓社)、『紅白歌合戦と日本人』(筑摩書房)などがある。

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