なぜNo.1ビジネス書書店が絵本グッズを売るのか 有事を経た今こそ、新たな収益多様化をめざせ

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グッズコーナーの横に置かれた絵本も、セットで売れるようになりました。

コンテンツを提供する出版社や作家には、グッズ販売によるライセンス料が入るようになり、丸善には、書籍以外の新しい収益が入るようになりました。ステークホルダー全員が得をするビジネスモデルが描けるようになったのです。

今後は、既存の絵本市場だけでなく、YouTubeやブログ、SNSなどからコンテンツを発信している、未来の絵本作家を発掘し、出版社と連携してオリジナルの絵本とグッズを商品開発したいという構想も抱いています。

EHONS事業部のメンバーの意識も大きく変わったそうです。委託のために、売れ残りがメーカーに返品できる本の販売とは異なり、お客様の真に求めるキャラクターグッズを提供できなければ、たちまち余剰在庫になります。

適切な数量か、適切な価格か、適切なタイミングで提供できているか? さまざまなことを自らの頭で考え、アイディアをひねり出し、緊張感を持って仕事をするようになりました。

新たな収益源を発見し、多様化をめざせ

こうした「EHONS TOKYO」の新たな収益源への取り組みは、これからの「強い丸善」を見据えた戦略の1つです。私の研究しているビジネスモデルの用語でいえば、「価値獲得を駆使することが新たな価値創造の定義につながる」となります。

著名なものを分類すれば、利益の生み方である「価値獲得」は30ほどに分類できます。今回の事例では、書店という「プロダクト販売」がメインのビジネスから、コンテンツを形にして販売するという「サービス業の物販」という新しい価値獲得を展開していることが見て取れます。

他方で、出版社や作家の側から見れば、自らの「コンテンツ(知財)」の販売というこれまでとは異なる収益源に着手することで、新たな利益の生み方を提案したことになります。

このように既存のビジネスでも、違った角度からビジネスモデルを見直していくことで、メインのビジネスに加えて、新たな収益源を増やし、最終的に利益の生み方を変える可能性はあるといえるのです。

(構成:三浦たまみ)

川上 昌直 兵庫県立大学国際商経学部教授

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かわかみ まさなお / Masanao Kawakami

1974年大阪府生まれ。福島大学経済学部准教授などを経て、2012年兵庫県立大学経営学部教授、学部再編により現職。博士(経営学)。「現場で使えるビジネスモデル」を体系づけ、実際の企業で「臨床」までを行う実践派の経営学者。ビジネスの全体像を俯瞰する「ナインセルメソッド」は、規模や業種を問わずさまざまな企業で新規事業立案に用いられ、自身もアドバイザーとして関与している。専門はビジネスモデル、マネタイズ。主な著作:『「つながり」の創りかた』(東洋経済新報社)、『ビジネスモデルのグランドデザイン』(中央経済社)。

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