トランプ政権、そしてバイデン政権では、「アメリカ中心主義」や「中産階級のための外交」というスローガンのもとで、経済の領域においてもナショナリズムやポピュリズムが流入する趨勢も見られる。そのような背景の中で、バイデン政権成立後に日米両国間で、経済安全保障をめぐる両国の協力関係を強化する方向へと動いていることは望ましいことである。
経済安全保障をめぐる国際戦略を強化せよ
今年の4月16日に行われた日米首脳会談において、経済安全保障に関する日米両国の合意が重要な位置を占めていた。それは、「日米競争力・強靱力(コア)パートナーシップ」と称される文章で詳しく触れられている。
この「コア・パートナーシップ」とは、中国における先端技術の急速な発展を背景として、日米両国が「競争力(コンペティティブネス)」と「強靱力(レジリエンス)」を強化するために、2国間での協議、協調、連携を強化していくという強い意志の表明である。これを軌道に乗せて、実際に運用するまで日米間でさまざまな調整が必要となるが、どの程度までこの動向がサプライチェーンの再編にまでつながるかが焦点となる。
米中対立とは、軍事面に限定されるものではなく、科学技術や、経済競争力、開発政策、エネルギー政策など、多様な分野にまたがるものである。中国の経済や科学技術の急速な成長によって、アメリカは多くの分野でかつての圧倒的な優位性を失っている。それゆえに、バイデン政権はアメリカ単独ではなく、日米同盟、日米豪印のいわゆる「クアッド」、米英豪の「AUKUS」などの多様な枠組みを活用して、価値を共有する諸国との信頼できる国際協力を促進する強い意志を持っている。
インド太平洋地域で、アメリカのそのような政策を推進していくうえでカギとなるのが、世界第3の経済大国であり、この地域でアメリカや中国に匹敵する科学技術力を有する日本である。
日本がどのような経済安全保障戦略を提示するかは、アメリカ政府のみならず、ほかのクアッド諸国、EU、CPTPP加盟国などにも多大な影響を及ぼす。日本政府が進めてきた「自由で開かれたインド太平洋(FOIP)」構想の3つの柱のうちでの2つ目の柱が「連結性(コネクティビティー)」であることに示されているように、日本の対外政策は多様な地域、多様な諸国を結びつけて、インド太平洋地域での持続可能な経済成長を可能にすることを重要な目的に掲げている。
無料会員登録はこちら
ログインはこちら