「重度のネット依存」と診断された男性が語った今 依存症の自助グループを仲間と立ちあげ活動
休むことなく行き続けたバイトも休みがちになり、無断欠勤するようになった。家族に他県にある病院への入院をすすめられ、「もう、ここまで来たら」と受け入れた。
入院は「引き出しを増やす大事な経験」
白水さんにとって、入院は「引き出しを増やしてもらう大事な経験」となった。
「どういう状況でゲームをしやすいのか、イライラするのか、メンタルが沈みがちになるのかなどを教えてもらいました。入院している人だけではなく、通院している人たちとも一緒に治療を受けたことも良かったと思います。回復が進んでいる同年代の人たちのなかには、大学に復学し、単位を取り直している人もいました」
「治らない病気なのでは」と思っていた白水さんにとって、回復に向かっている仲間は「希望」となった。ただ、同じ大学への復学は難しいと考え、入院期間中に中途退学し、フリーターになった。
退院後の白水さんを悩ませたのは、仲間とのつながりや通院先だ。住んでいる地域にはネット・ゲーム依存の自助グループはなく、以前通院していた病院は半年先まで予約が埋まっている状況だった。そんななか、入院していた病院からボランティアの誘いがあった。
「ネット依存状態、あるいは依存気味の中高生を対象としたキャンプのボランティアでした。同時期に入院していた同年代の仲間もボランティアや参加者として集まり、キャンプに参加したことで仲間の輪が広がったんです。日常的に通えるようなところで、まわりにこんな集まりがあればいいなと思いました」
知り合いに病院を教えてもらい、毎週通える通院先は見つかった。ところが、ようやく持ち直し始めたころに、新型コロナウイルスの感染が拡大。緊急事態宣言などにより、2020年はボランティアをしたキャンプが中止になったという知らせを受けた。
「知らせを聞いて、ボランティア仲間に久しぶりにオンラインで再会したんです。仲間も居場所の必要性を感じていて、オンラインで自助グループを作ろうという話になりました」
こうして、2020年に仲間とネット・ゲーム依存症の自助グループ「FiSH(Field of Sharing Hearts)」を立ち上げ、約1年以上になる。参加者の多くは、10代、20代の学生や社会人だ。同じ年にASK認定依存症予防教育アドバイザーにも認定され、啓発のための講演活動もおこなうようになった。