「最低賃金も稼げない」米国ギグワークの衝撃実態 労働者の多くが移民、もしくはマイノリティー

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マサチューセッツ州のギグワーカーは推定約30万人。大半が移民やマイノリティーだ。「ただでさえ社会から置き去りにされている労働者のグループがギグ大手によって搾取されている。それが問題だ」。そう話すのは、ボストン市に拠点を置くギグワーカー支援団体「Coalition to Protect Workers’ Rights」(労働者の権利保護連合)ディレクターのマイク・ファイアストーン氏だ。

同氏によれば、ギグ大手は納税義務や労働者の公正な処遇、社会保障の積み立てなどを行わず、州法を犯しているという。2020年7月、マサチューセッツ州当局は、ウーバーとリフトが州の賃金・時間法に違反し、運転手を請負業者に「誤分類」しているとして、カリフォルニア州に続き両社を提訴した。

カリフォルニア州では2020年1月、ギグワーカーを「請負業者」として分類するための基準厳格化などを定めた「AB5」法が施行された。

だが、ウーバーやリフト、ドアダッシュ、インスタカートなどが猛反発し、巨費を投じて反キャンペーンを実施。ライドシェア運転手のAB5適用除外などをうたったギグ大手推進の住民立法「Proposition 22」(プロポジション22。以下、プロップ22)が、昨年11月3日の大統領選挙と同時に行われた住民投票で成立している。

プロップ22にならった法案がマサチューセッツ州でも

マサチューセッツ州でも今春、プロップ22にならった「House Bill 1234」(HB 1234)法案が州議会の下院に提出されたが、通過する見込みは薄い。そこでギグ企業の大手は、2022年11月8日の中間選挙で、その審判を有権者にゆだねようと、住民投票にかけるべく、邁進している。

今年9月29日にカリフォルニア大学バークレー校の研究者らが発表した報告書によれば、HB 1234と同様の住民立法が成立すれば、マサチューセッツで運転手として働くギグワーカーの大半の実質賃金は、時給わずか4.82ドルになりかねないという。

「われわれは団結し、ギグ企業(の目論見)を阻止してみせる。ギグワーカーにも、他の労働者と同じ権利を与えたい」と、ファイアストーン氏は意気込む。「有権者も賛同してくれると思う」(同氏)。

ひるがえってニューヨークでは全米主要都市の先陣を切って、市議会が9月23日、食品・料理配達サービスのギグワーカーに最低賃金やレストランのトイレ使用などを保障し、ギグ企業が顧客のチップを流用することなく、配達員の報酬に上乗せして支払うことなどを定めた画期的な6法案を可決した。

電動アシスト自転車でニューヨーカーの家から家へ料理を届けて回る市内の配達員は約6万5000人。その95%が男性で、圧倒的にヒスパニック系が多い。パンデミックによるロックダウン(都市封鎖)やレストランの休業で失業した若い移民労働者が配達員に転じたが、英語力の点から、ことさら不利な境遇に置かれやすい。コロナ禍以降急激に悪化した市内の治安も大きな脅威だ。

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