「最低賃金も稼げない」米国ギグワークの衝撃実態 労働者の多くが移民、もしくはマイノリティー

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そうした中、注目されているのが、移民を中心とするニューヨーク市の料理宅配人が権利保護を求めて結成した非営利団体「Los Deliveristas Unidos」(LDU)だ。同団体名は、スペイン語で「団結した配達員」を意味する。

「親労働者」を標榜するバイデン政権の誕生を追い風に、労働組合の後ろ盾を得て、パワーアップ。4月21日には、同メンバーなど、2000人以上が電動アシスト自転車などに乗ってニューヨーク市中心街に繰り出し、デモ行進を行った。

LDUの生みの親である移民擁護団体「Worker’s Justice Project」(労働者の正義プロジェクト)とLDU、コーネル大学の9月13日付共同報告書は、ニューヨーク市で殉職した配達員が2020年は7人に上ったと報告している。最年少は22歳の男性2人だった。今年は、配達中に射殺されたドアダッシュの男性ギグワーカー(29)など、9人が命を落としている。

LDUによると、多くの配達員は複数の料理配達アプリを使い、1日に12時間働くこともある。だが、ニューヨーカーの胃袋を満たす彼らが皮肉にも、自分たち自身の家族を食べさせるだけの稼ぎを得られない。

土日も休まず働く配達員は全体の33%

テック専門のオンラインニュース「バージ」とニューヨーク誌の9月13日付コラボ記事「デリバリーワーカーの反乱」は、同市の配達員が「アプリに搾取され、泥棒に襲われ、警察には守ってもらえず、頼れるのは自分たちだけ」と報じている。夜の配達では路上で襲われ、高金利ローンで買った商売道具の電動アシスト自転車を盗まれることもあるという。

同記事に掲載されている動画では、ヒスパニック系の若手男性配達員が背中に大きな配達用バッグを背負い、電動アシスト自転車で市内を走りながらスペイン語で語っているが、1週間に60時間以上働くという。アイスクリームを1つ届けるのに80ブロック(約6.4キロメートル)走ることもあるそうだ。顧客から低い格付けを付けられないよう少しでも早く料理を届けるべく、車と車の間を縫って駆け抜ける。

土日も休まず働く配達員は全体の33%と、最多だ。配達員の59%が30歳未満にもかかわらず、家族を養っている人は4割に上る。ひと月の平均収入はチップ込みで2380.24ドル。時給換算で12.4ドルだが、これは経費抜きの数字だ。電動アシスト自転車1000~2200ドルに加え、スマホのデータ無制限プランも負担しなければならない。

既存産業に「創造的破壊」をもたらし、既成のルールを一変させ、世界を変えたアメリカのテック大手。だが、そのイノベーションには大きな代償が伴うことを忘れてはならない。

(3日目第1回は30代女性が"夜逃げ"した「ヤバい格安賃貸」の正体

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