「最低賃金も稼げない」米国ギグワークの衝撃実態 労働者の多くが移民、もしくはマイノリティー

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プラットフォーマーは独自のアルゴリズムを駆使し、あらゆる場所に配達員を派遣するが、ギグワーカーの労働条件はすこぶる悪い。

低賃金や人員過剰による仕事の不安定さをはじめ、医療保険や社会保障などの提供もなく、車や自転車の購入、ガソリン代、自動車保険、車のメンテナンス、清掃代、スマホの支払いまで、経費は自腹だ。

「そろそろタイヤを交換し、ブレーキも調整しなければ」

ギグワーカーズ・コレクティブのウィリー・ソリス氏(写真:本人提供)

そう話すのは、アメリカ南部テキサス州ダラス・フォートワース都市圏に住む配達員のウィリー・ソリス氏(43)。

全米のインスタカート買い物代行人・配達人(ショッパー)1万3000人が賃上げなどを求め活動する非営利団体「Gig Workers Collective」(ギグワーカーズ・コレクティブ)の主要オーガナイザーでもある。

同団体は今年9月、インスタカートのアプリ削除を顧客に呼び掛けるボイコットキャンペーンを開始。10月16日にはストライキも行い、要求が受け入れられるまで働かないメンバーも多い。

ショッパー同士の競い合いで低賃金に

3人の子供と同居するソリス氏は家族を養うため、ほかのギグワークも掛け持ちしている。全収入は月額2000ドルほどだが、その3分の1が経費に消えてしまう。2年前にインスタカートで働き始めたが、ショッパーが急増し、稼げなくなった。

「ショッパー同士が仕事を求めて競い合っている。供給過剰が、『race to the bottom』(底辺への競争)的な低賃金を可能にしている。みんな必死だから、どのような注文だろうが、飛びつく」と、ソリス氏は言う。彼はアメリカ生まれだが、ギグワーカーの大半は移民か、同氏のようにヒスパニック系などのマイノリティーだ。シングルマザーも多い。

「ギグワーカーは搾取されている。ギグ企業が何十億ドルもの規模に成長し、ベンチャーキャピタリストとともに大儲けしているのは、私たちが大きな代償を払っているからだ」(ソリス氏)

インスタカートは、1バッチの基本給を7~10ドルと定めている。「バッチ」とは、1回分の注文の「束」を指す。1バッチが1件のこともあれば、同じ店舗での3件の注文を示すこともある。3件で7~10ドルでは不合理だとギグワーカーズ・コレクティブは訴えるが、会社側は、1店で複数の注文をこなすと移動距離も少なくて済み、チップを複数の顧客からもらえるとし、賃金体系の「透明性」を強調する。

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