「最低賃金も稼げない」米国ギグワークの衝撃実態 労働者の多くが移民、もしくはマイノリティー

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コロナ禍で買い物を代行をするインスタカートの配達員(写真:ロイター/アフロ)
日本でも広がるギグワークだが、配車サービスのウーバーやリフト、買い物代行のインスタカート、料理宅配のドアダッシュなどが本社を置くアメリカでは、非常に大きな労働問題となっている。
貧困に陥った若者たちの実態に4日連続で迫る特集「見過ごされる若者の貧困」2日目の第3回は、ギグワーク先進国であるアメリカの実情をニューヨーク在住のジャーナリスト、肥田美佐子氏が解説する(1日目の記事はこちらからご覧ください)。
【2日目のそのほかの記事】
第1回:経験者が激白!流行する「ギグワーク」過酷な末路
第2回:若者がハマる「ギグワーク」脱法的仕組みの大問題

9月1日夜10時過ぎ、ハリケーン「アイダ」による豪雨と洪水に見舞われたアメリカ・ニューヨーク市ブルックリン――。ヒスパニック系男性配達員が白いビニール袋に入れた宅配用料理を左手に持ち、腰近くまで洪水に漬かりながら自転車を押して歩く。その姿を捉えた動画が、ツイッターでまたたく間に拡散された。

この特集の一覧はこちら

民主党の若手下院議員、アレクサンドリア・オカシオ=コルテス氏(ニューヨーク州選出)もリツイートして危険性を訴え、デリバリーを取らないよう、人々に呼び掛けた。動画は11月25日現在、1270万回以上再生されている。

動画を撮影したフリーの男性写真家はニューヨーク・タイムズ紙の取材(9月2日付)に対し、経済格差の大きさに「むかついた」と吐露。「災害時に働かなくていい特権を持っている人もいれば、持っていない人もいる」と語っている。

ニューヨーク市で増えた仕事は「宅配」のみ

アメリカのブルッキングス研究所の3月19日付報告書によると、ギグワークは、もはやアメリカ社会の周縁的な現象ではない。何らかのギグワークを収入として当てにするアメリカ人は、2018年までに35%超に達していた。記録的な数のアメリカ人が失業や収入減に見舞われたコロナ下では50%に達した可能性があるという。

ニュースクール大学・ニューヨーク市政問題センターの1月27日付報告書は、昨年2~12月にかけてニューヨーク市で増えた仕事は、料理宅配最大手のドアダッシュやウーバーイーツ、アマゾンなど「デリバリー(宅配)」の仕事のみ(74%増)だと分析している。

アメリカの買い物代行・食品宅配サービス大手、インスタカートは、コロナ禍で、「ショッパー」と呼ばれる買い物代行人兼配達員を30万人増員。現在は北米全体で50万人が登録している。同社によれば、多くの人たちがフレキシブルな働き方で手っ取り早く稼げる機会を求めていることがわかり、そうした機会を提供できてうれしいという。

一方、社会保障や最低賃金が適用される給与所得者の「従業員」でなく、「個人請負業者」として分類されるギグワークには問題が山積だ。

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