若者がハマる「ギグワーク」脱法的仕組みの大問題 労働問題に詳しい弁護士が指摘「日本は対応遅い」

✎ 1〜 ✎ 5 ✎ 6 ✎ 7 ✎ 最新
著者フォロー
ブックマーク

記事をマイページに保存
できます。
無料会員登録はこちら
はこちら

印刷ページの表示はログインが必要です。

無料会員登録はこちら

はこちら

縮小

イギリスは立法によって「被用者(employee)」を対象にしたものと、より広い概念の「労働者(worker)」を対象としたものに分かれているが、やはり最近の最高裁判決で、ウーバータクシーの運転手を「労働者」だと認定し、最低賃金の適用や有給休暇の付与などを認めた。

――アメリカは州レベルでも活発な動きがあるそうですね。

激しいせめぎ合いが起きているのが、カリフォルニア州だ。同州の最高裁はプラットフォーム型ビジネスの個人請負が独立した事業主であることの証明を、雇い主側に課す判決を出した。

これに対してウーバーなどプラットフォーマー側が猛反発して、州の住民投票でウーバーなどのアプリによる運転手を独立事業主することを賛成多数で承認させた。

最低賃金や安全衛生の規制の対象となるケースも

この点をめぐる争いは今でも議論や訴訟が続いているが、アメリカのほかの州でもさまざまな動きがある。労働者性が認められない独立事業主とされても、最低賃金の規制や安全衛生の規制の対象とされるケースも出始めている。

バイデン政権は、先のカリフォルニア州のような立証責任を雇い主側に課すモデルを連邦レベルで採用する法案を議会に提出し、下院では可決されている。

――改めて、日本の対応の遅れが目立ちます。

日本でも今春、「フリーランスとして安心して働ける環境を整備するためのガイドライン」が定められたが、中身は労災補償の特別加入制度の一部拡大といった限定的なものにとどまる。

プラットフォーム型ビジネスは今後、さらに広い分野に浸透するだろうことは間違いない。アプリによる指示や事実上の拘束、ランキングや点数化などによるコントロールなどの従来とは異なる実態をしっかり踏まえたうえで、そこで働く個人請負の就業実態に即した労働者概念の見直しは喫緊の課題だろう。

(2日目第3回は「最低賃金も稼げない」米国ギグワークの衝撃実態

風間 直樹 東洋経済コラムニスト

著者をフォローすると、最新記事をメールでお知らせします。右上のボタンからフォローください。

かざま・なおき / Naoki Kazama

1977年長野県生まれ。早稲田大学政治経済学部卒、法学研究科修了後、2001年東洋経済新報社に入社。電機、金融担当を経て、雇用労働、社会保障問題等を取材。2014年8月から2017年1月まで朝日新聞記者(特別報道部、経済部)。復帰後は『週刊東洋経済』副編集長を経て、2019年10月から調査報道部長、2022年4月から24年7月まで『週刊東洋経済』編集長。著書に『ルポ・収容所列島 ニッポンの精神医療を問う』(2022年)、『雇用融解』(2007年)、『融解連鎖』(2010年)、電子書籍に『ユニクロ 疲弊する職場』(2013年)など。

この著者の記事一覧はこちら
ブックマーク

記事をマイページに保存
できます。
無料会員登録はこちら
はこちら

印刷ページの表示はログインが必要です。

無料会員登録はこちら

はこちら

関連記事
トピックボードAD
ライフの人気記事