日本振興銀行事件--江上剛・社外取締役の社長選出は適正か?
江上剛・新社長人事には、そうしたリスクが内在している。日本振興銀行は、異常な経営体質にあったのだろうが、異常の上塗りにならないだろうか。
社外取締役として、日本振興銀行の経営を見守ってきた江上剛氏が、新社長として同行の経営の任に当たるというのは、そうした危うさがあることを指摘しておきたい。
日本の企業社会は相撲協会を笑えるか
日本相撲協会の野球賭博スキャンダル事件では、相撲協会にガバナンスがない、ガバナンス整備のための独立した外部委員会を作る、などの議論や動きがあった。
相撲協会にガバナンスを求めるより、日本の企業社会にガバナンスを求めるのが筋と思われる。極論すると、日本の企業社会は、日本振興銀行に見られるように、ガバナンスなどないのが現状である。
相撲協会と、その点では、大きく変わりはなく、笑える立場にはないのではないか。
アメリカでは、いわゆる社外取締役会が経営の中枢で、株主(オーナー)の代表などから構成されている。社長、会長は、CEO(チーフ・エグゼクティブ・オフィサー)を筆頭にオフィサーであり、執行役である。いわゆる社外取締役会がオフィサーを任命する。
したがって、社長、会長のオフィサーの失敗は、社外取締役会の失敗になる。同罪と言うよりは、社外取締役の罪のほうが重い。社長、会長を任命した責任は重いためだ。
日本では、社長、会長のオフィサーが、社外取締役を任命する。社長、会長が悪くても、社外取締役は口を出せないことが大半だ。泣く泣く「共同正犯」になる。
本来であれば、会長や社長が逮捕された場合、共同正犯である社外取締役の中から新社長が選ばれるということはおかしい。しかし、日本では社外取締役には実質的な責任や権限がない。そこで、社外取締役から新社長が選出される、といった事態が生じることになる。
そうした実体が、日本振興銀行の江上剛・新社長の就任の背景にある。当事者たちは何も問題はないと判断しているに違いない。
しかし、それでよいのか。日本的な曖昧なドサクサ・トップ人事をやっているようでは、日本の企業社会はよくならないのではないかと、いつものことながら悲観させられる。
(東洋経済HRオンライン編集部)
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