ある朝、ノートにこう書いた。「学校へ行かないなら、お父さんのところへ行ってください。お母さんはもう無理です」。次男はどう反応するだろう。その時点でひどいことを書いてしまったという後悔はひとつもなかった。帰宅後、いつもと同じ場所にノートは置かれていた。そっとノートを開く。次男の字が見えた。小さく弱弱しい、かすんで消えそうな字でそれは書かれていた。
消えそうな字で「ゆるしてください」
「ゆるしてください。ここにいさせてください。あしたは学校にいきますから」。
それを目にしたときの思いを正確に表現する言葉を、私は持っていない。次男に本当にひどいことをしてしまったという思いが急に湧いてくる。ゆるしてもらわなければならないのは私のほうだ。それでもいっしょにいたいと言ってくれるのか。力が入らない手で、やっとの思いで書いたであろう言葉に込められた次男の思いが痛いくらいに伝わってきた。同時に、「もう逃げられないんだぞ」と言われた気がして恐ろしくもあった。
ノートはそこで終わっている。これ以上、次男を苦しめてはならない。それぐらいは私にもわかったから。(後藤誠子)
次男が高校1年生の夏に不登校。現在もひきこもり生活を続けている。後藤さんはその経験を通して学んだことを共有したいと岩手県で当事者を地域で支える「笑いのたねプロジェクト」を立ち上げ活動中。
