かつて筆者はフジテレビの番組において森本敏元防衛相にこのような調達のあり方について質した。公共事業は(いくらインチキでも)空港にしろ、道路にしろ、需要予測を出し、それを元にいつまでに完成させ、総費用が提示されるが防衛装備でこれがないのはおかしい。計画が無いに等しいではないか、と。
これに対して森本氏は防衛装備と公共事業は異なる主張した。だが総合的な調達計画も、運用構想も、いつまでに戦力化されるかも示さずに装備調達が開始される現状は、軍事的にもおかしい。計画が無いのに見切り発車で、多額の税金を投入することになるからだ。
装備調達は民間でいえば設備投資に相当する。設備投資の計画もなく、導入時期、総予算も決めずになし崩し的に投資を行う企業はないのではないか。新聞やテレビなどのメディアはこれをまったく報じないのだが、だからといって軽視できる問題ではない。むしろ、国の安全保障の根幹に関わる重大問題といって過言ではない。
採用機種はすでに決まっている
採用が予定されている機種・車種はそれぞれ滞空型無人機(UAV)がグローバル・ホーク、チルトローター機がオスプレイ、水陸両用車がAAV7だ。そのように明記されているわけではないが、他の候補は存在しない。
その理由は単純だ。そもそもグローバル・ホークと同じカテゴリーのUAVは存在しないし、実用化された軍用チルトローター機はオスプレイだけだ。船型の水陸両用装甲車で我が国が入手可能なものも、AAV7しか存在しない。他に通常の装甲車に近いタイプの水陸両用装甲車もあるが、陸上自衛隊が水陸両用車のサンプルとして調達したのはAAV7のみである。
つまり防衛省の調達計画に、複数の候補は存在しない。まるで中国や北朝鮮の民主的選挙のようなものなのである。その点で、「これから機種・車種を決定して財務省と折衝する」という説明は虚偽としか思えない。すでに中期防策定時からこれらの装備の調達は決まっていたとみるべきだ。
しかもはじめに調達ありきで、自衛隊に必要な装備であるか、どのように運用するか、運用コストはどれほどかかるのか、という点についてもほとんど検討された形跡がない。
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