節約志向で「安い食品ばかり買う」人の重大盲点 「節約の達人」に欠けている「大事な視点」は?

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私は「食費の節約」がいけないといっているわけではありません。食費を節約したいのは、どなたも同じでしょう。

じつは「安部ごはん」と「節約」が両立しないというのは誤解です。「安部ごはん」は食費の節約に大いに貢献できます。その鍵は「コスト感覚」にあります。

加工食品は、通常、販売価格に対して、食材費(原材料費)が2~3割程度になるように設定するのが主流です。つまり「100円のおにぎり」なら、食材は「20~30円」ほどになるよう調整するのです。この原材料費に、「人件費」「流通費」「家賃」「宣伝費」など、さまざまなコストが乗っかって、最終価格・販売価格となるのです。

市販のおにぎりは、商品によってもちろん差がありますが、だいたいお米が50グラムほど使用されているものが多く売られています。お米の販売価格をキロあたり300円程度とすると、50グラムは15円。それを100円で買っているのです。おにぎりの具材や包装代が10円としても、75円が「手間賃」です。

自分でお米を炊いておにぎりを握れば、100円のうち75円の「手間賃」をほかの人に渡さずに済むわけです。そうやって「原価」を考えれば「手作り」こそが「最高の節約」となるのではないでしょうか。

子どもは「食べ物」を選べない

私はいつも「子どもは『食べ物』を選べない」と言っています。子どもは親が与えた食べものを、何の疑問もなく、素直に口に入れます。

「安さ」ばかりを見て添加物が大量に含まれた食事と、ちゃんと吟味した食材を使って手作りした食事、どちらを子どもと、家族と、一緒に食べたいでしょうか?

もちろん「なにがなんでも手作りでないといけない」という原理主義みたいなことをいっているわけでは一切ありません。

たまに加工食品やお総菜を使う日があっても、もちろんいいと思います。でも「今日は出来合いのお惣菜で済ませてしまった」と思ったら、「次は手作りしよう」と思えるのではないでしょうか。そこが大事なポイントだと私は思います。

安部司さんの1DAY料理講座「安部ごはん・男子塾」(男性限定)を、11/23(火祝)午前11時より「タカコナカムラホールフードスクール」で実施します。「魔法の調味料」と「安部ごはん」を、安部さんがみなさんと一緒に作ります!詳しくはこちら (写真:佳川奈央)

なにより、別に難しいことを考えなくても、「料理が楽しい」と思えたら、それがすべてを解決します。

手作りのご飯を子どもや家族が喜んでくれれば、「手作りしないといけない」「やらなきゃいけない」というノルマ意識がなくなります。子どもが「おいしいね」といって笑顔になれば、料理が楽しくなり、「また作ろう」と思えるはずです。

もちろんすべてをゼロから手作りする時間は、いまの忙しい人にはないと思います。でも、だからといって、何でも加工食品・出来合い惣菜で済ませなくても、「時短で、安い材料で、無添加のおいしい食事」を作ることは可能なのです。そのために私は、5つの「魔法の調味料」を開発し、それで簡単に作れる102品のレシピを15年かけて考えました。

たとえば、「安部ごはん」では「手羽中」さえ買ってくれば、あとは「魔法の調味料」の「かえし」と、「白コショウ」「白炒りごま」だけで簡単にできる「チキンバー」の作り方も紹介もしています。「こんなに噛みごたえがあり、鶏肉の凝縮したうま味が感じられるレシピが、自宅でできるのか」と、実際に作った人が驚くほどの「手羽肉専門店の味を再現した人気レシピ」です。ぜひ一度、作ってみてください。

「簡単なのに、やっぱり家で作ると美味しいね」と、「家での食事が楽しく、美味しくなる」、その第一歩に「安部ごはん」がなれば、開発者として、とてもうれしく思います。

安部氏が開発した「かえし」さえ用意すれば、簡単に作れる「ガチで食べたい人の専門店のチキンバー」(撮影:佳川奈央)
安部 司 『食品の裏側』著者、一般社団法人 加工食品診断士協会 代表理事

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あべ つかさ / Tsukasa Abe

1951年、福岡県の農家に生まれる。山口大学文理学部化学科を卒業後、総合商社食品課に勤務する。退職後は、海外での食品の開発輸入や、無添加食品等の開発、伝統食品の復活に取り組んでいる。NPO熊本県有機農業研究会JAS判定員、経済産業省水質第一種公害防止管理者を務めつつ、食品製造関係工業所有権(特許)4件を取得。開発した商品は300品目以上。

2005年に上梓した『食品の裏側 みんな大好きな食品添加物』(東洋経済新報社)は、食品添加物の現状や食生活の危機を訴え、70万部を突破するベストセラーに。その他の著書に『食品の裏側2 実態編 やっぱり大好き食品添加物』(東洋経済新報社)などがある。

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