いま公立でも中高一貫校が増えている本当の理由 日本の高校受験は世界的に見ても珍しい制度

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拙著『なぜ中学受験するのか?』でも詳しく解説しているが、なぜ日本では、子どもの発達段階を無視した入試制度になっているのか。それを知るには歴史を紐解く必要がある。

反抗期と高校受験の両立は至難の業

日本の旧制中学は、明治時代にイギリスの5年制中等教育学校をまねてつくられた。旧制中学は男子校だった。それに相当する女子の教育機関は高等女学校と呼ばれていた。

第2次世界大戦後、中学校までを義務教育にしようと試みたが、小学校の6年間に加えてさらに中学校の5年間を義務教育化するには資金が足りなかった。そこで、中等教育を前期の中学校、後期の高等学校に分け、中学校までを義務教育にした。つまり「6・3・3」は妥協策だったのだ。

このとき、私立の旧制中学の多くは、中高一貫校に改組することで、5年制教育をほぼそのままスライドした。

戦前において、義務教育ではない旧制中学や高等女学校に通えるのは一部の子どもに限られていた。入試もあった。特に人気校の入試は難関で、もしかしたら一部では現代よりも過酷だったかもしれない。

その旧制中学の受験熱が戦後、そのまま新制高校の入試にスライドしてしまった。フランスやフィンランドのような進学制度にはならなかったのである。

結果として、日本の子どもたちの多くは、高校受験と反抗期を両立しなければいけなくなった。子どもの発達段階から考えて、これは酷である。反抗期が強く出すぎれば、受験勉強がおろそかになり高校入試で希望の進路は実現できないし、受験勉強一辺倒になってしまうと、反抗期を全うできず精神的自立や批判的精神の涵養が不十分になってしまう。

さらに1990年代以降は、中学校の成績表に「意欲・関心・態度」の項目が加わった。もともとはペーパーテストの結果だけでなく、数値化しにくい学習姿勢を評価しようという意図だったが、評価者である教員の恣意を拡大する可能性も否めない。

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