いま公立でも中高一貫校が増えている本当の理由 日本の高校受験は世界的に見ても珍しい制度

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人間は監視されていると感じるだけで自分の行動を抑制してしまうとは、ミシェル・フーコーの『監獄の誕生 監視と処罰』である。多くの中学生は教員の目を気にして“いい子”を演じてしまう。ますます反抗期が骨抜きにされる。

公立中高一貫校は「ゆとり教育」の産物

その点、中高一貫校に通えば、高校受験を回避できる。そのぶん、思春期や反抗期を謳歌する余地が生まれる。つまり「ゆとり」である。

たとえば理科に関していえば、多くの中高一貫校が、特に中学生段階において、実験とレポートに時間をかける。実験結果がわかってしまうと面白くないので、教科書での予習を禁止している学校すらある。英語でも、テストの点数には直結しない多読や英会話に取り組む。これが英語力の素地を形成する。

「先取り教育」というよりはむしろ「ゆとり教育」だ。その素地があればこそ、大学受験を意識した勉強を始めたときにも高い成果が得られるのだ。富士山の裾野が広いのと同じ原理である。

2000年代から公立中高一貫校が全国に登場するが、実はこれももともとはいわゆる「ゆとり教育」の一環として始まったものだった。中高一貫校化した公立高校が進学実績を向上させる事例が相次いでいるが、「ゆとり」の効果は学業だけに限らない。

2018年に東京都が発表した「都立中高一貫教育校検証委員会報告書」によれば、「併設型高校における各種大会・コンクール等での実績について、過去3年間の全国大会以上の出場・受賞実績を見ると、文化・スポーツの双方で実績が挙げられているが、 個人での出場・受賞実績は概ね内進生によるものとなっている。内進生については、高校受験のないゆとりを生かして、趣味や部活動など、自分の興味や関心があることに取り組めていることが結果に結び付いているものと考えられる」とのこと。

「併設型高校」とは高校からも入学枠を設けている5つの都立中高一貫校を指す。これらの学校では、高校課程の3年間において「内進生(中学校からの入学者)」と「外進生(高校からの入学者)」がともに学ぶ。残り5つの都立中高一貫校は「中等教育学校」と呼ばれ、入学機会を中学校段階だけに限り、完全中高一貫教育を行っている。

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