東京一極集中の日本に突きつけられる大きな難題 「デジタル田園都市国家構想実現会議」が担う重責

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いつまでも東京一極集中を続けられません(写真:metamorworks/PIXTA)

岸田文雄政権は11月11日、「デジタル田園都市国家構想実現会議」の初会合を開きました。

ご存じのように、岸田派は、自民党の老舗派閥の宏池会の流れをくみます。実は、1978年から急逝するまで総理在任期間がわずか1年半にすぎなかった、宏池会の大平正芳政権の掲げたキャッチフレーズこそが「田園都市構想」です。

都市と農村が互いに支え合う理想的なあり方

香川県の農村出身の大平さんは、都市と農村が有機的につながり、互いに支え合うようなあり方を理想としました。それは、きわめて精神性の高い概念でした。

その「田園都市構想」を理論的にまとめたのは、大平政権の政策ブレーンを務めた、劇作家の山崎正和さんと、政治学者の香山健一さんです。

大平さんは当時、次の言葉を述べたといわれています。

「大平政権で役に立たなくても構わないから、歴史を踏まえて将来を展望していただきたい」――。

はたして岸田氏は、「デジタル田園都市国家構想」の実現にあたって、それだけの度量を持っているのでしょうか。

大平政権は、発足に際して、「大平政策研究会」なる9つの研究グループを立ち上げ、気鋭の研究者のほか、各省庁のえりすぐりの課長を参加させました。9つの研究グループのうち、政権の最優先課題として「田園都市構想研究グループ」を立ち上げたのです。議長を梅棹忠夫さんが務め、メンバーは香山健一さん、山崎正和さん、黒川紀章さん、浅利慶太さんら17人でした。

梅棹さんは「私はむしろ巻き込まれたほうです。あれを仕掛けたのは香山健一さんと山崎さんです」と語っています。

山崎さんには、“柔らかい個人主義”という明確なビジョンがありました。吉野作造賞を受賞した著作『柔らかい個人主義の誕生』がそれです。

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