人員削減によるV字回復はNO!豊田章男の「心」

コロナ後も感謝でサプライチェーンをつなぐ

優先順位の1番は「私が落ち着いていること」という豊田章男氏(撮影:風間仁一郎)  
2021年3月期の営業利益は8割減――。減益幅もさることながら、業績予想を示したこと自体が注目されたトヨタ自動車。「危機的な状況だからこそ、1つの基準を示すことが必要」と語った豊田章男社長は、「コロナの収束後、経済復興の牽引役としての準備は整っている」とも述べた。
リーマンショックをくぐり抜けてきたトップの目には、今の危機がどう見えているのか。新刊『豊田章男』が好調な片山修氏が、その意図や背景を読み解く。

クルマは「気持ちを運ぶ」乗り物だった

「コロナ危機は、リーマンショックよりもはるかにインパクトが大きい」

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5月12日の決算会見でトヨタ社長の豊田章男氏はそのように述べたが、危機にめっぽう強いのが、彼の持ち味である。

章男氏は今年、社長就任12年目に入る。彼と同じように、リーマンショックを機に社長に就任したホンダの伊東孝紳氏は、とっくに表舞台から消えている。

日産自動車元社長のカルロス・ゴーン氏は、東京地検に逮捕され、トップの座を追われたばかりか、レバノンに逃亡した。

マツダもスバルも、当時の社長は姿を消している。かろうじて、スズキの社長を務めていた鈴木修、三菱自動車の益子修の両氏が会長職にとどまっているにすぎない。

章男氏は、リコール問題、東日本大震災など、幾多の困難、修羅場をくぐり抜けてきた歴戦の勇士といっていい。決算会見で危機を乗り越えるにあたっての優先順位を問われ、「1番は、私が落ち着いていること」と答えたが、彼のリーダーとしての強みは、そこにある。少々のことには動じない。

章男氏は、「世の中には、コントロールできることとコントロールできないことがある」として、自分がコントロールできることをしっかりやっていこうと訴える。また、「コントロールできないことに深刻になれば、ネガティブになる」として、ネガティブ・ループに陥ることを戒める。大切なのは、誰かのために動くこと、感謝することだと呼びかける。

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