人員削減によるV字回復はNO!豊田章男の「心」 コロナ後も感謝でサプライチェーンをつなぐ

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トヨタは2021年、東富士にある175エーカーの工場跡地に、未来の実証都市「ウーブン・シティ」の建設を開始する計画だ。2000人以上の住民が、働いて、遊んで、生活を送りながら、実証に参加する仕組みである。

「スマート・シティ」では、データの利活用が必須だが、住民にとってそれは懸念材料でもある。自分のデータがどこまで見られているのかという不安、管理社会を招くのではないかという危惧から逃れることはできない。

実は、こんなケースがある。グーグルの兄弟会社のサイド・ウォーク・ラボは、最近、カナダ東部のトロント市で計画していた「スマート・シティ事業」からの撤退を発表した。その背景には、個人情報保護問題があると言われている。

その点、トヨタは「ウーブン・シティ」でも、“人”中心の発想を貫く。データの利活用とプライバシー重視を両立させながら未来の都市を建設し、決して管理社会にはしない方針だ。あくまでも“人”を中心に、便利で快適な未来を実現する計画である。

また成長すればいい

いつの日か、コロナが終息する日は必ずやってくる。そのとき、働き方や生活スタイル、移動のあり方はこれまでとは違っているだろう。

「ウーブン・シティ」構想にも新たな視点が必要となるだろう。それは、トヨタにとって、リスクでもありチャンスでもある。

「新しいトヨタに生まれ変わるスタートポイントに立った」として、章男氏は次のように述べた。

「新しい時代になっても、成長すればいいんだ、というふうに頼りにされるトヨタに生まれ変わる、大きなチャンスをいただいたと思う。コロナ禍でのトヨタの経営をリードしていきたい」

章男氏は、次のようなメッセージを発し、社員を鼓舞する。

「冬が終われば、春がくる」――。

彼の目線は、すでに未来のトヨタに注がれている。

片山 修 経済ジャーナリスト

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かたやま おさむ / Osamu Katayama

愛知県名古屋市生まれ。経済、経営など幅広いテーマを手掛けるジャーナリスト。鋭い着眼点と柔軟な発想が持ち味。長年の取材経験に裏打ちされた企業論、組織論、人材論には定評がある。

『豊田章男』『技術屋の王国――ホンダの不思議力』『山崎正和の遺言』(すべて東洋経済新報社)、『時代は踊った――オンリー・イエスタディ ’80s』(文藝春秋)、『ソニーの法則』『トヨタの方式』(ともに小学館文庫)、『本田宗一郎と「昭和の男」たち』(文春新書)、『なぜザ・プレミアム・モルツはこんなに売れるのか?』(小学館)、『パナソニック、「イノベーション量産」企業に進化する!』(PHP研究所)など、著書は60冊を超える。

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