豊田章男がトヨタの冠がない会社に私財注ぐ訳 「トヨタ社長と資本家」2つの顔で未来つくる

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トヨタ自動車の豊田章男社長(左)とTRI-ADのジェームス・カフナーCEO(筆者撮影)

豊田章男氏の立つステージが一段も二段も上がった。リーマン・ショック後の大赤字を抱えて社長に就任して12年目、彼は、「経営者」のみならず、いま「資本家」としてスタートした。なぜ資本家なのか。章男氏にインタビューの機会を得て話を聞いた。新たな「豊田章男」論である。

“一代一業”は、豊田家の家訓である。

彼は、こう語った。

「〝一代一業〟というミッションは、私自身、生まれたときからずっと聞かされてきた言葉です。継承者として、何かしら未来への橋渡しを、人生のどこかでしなきゃいけないと思ってきた」

ソフトウェア事業を家訓の“一代一業”に見定めた

豊田家を遡ること3代。章男氏の曾祖父にあたる発明王の豊田佐吉は、トヨタグループの原点、豊田自動織機を設立した。息子で2代目の喜一郎が興したのが、自動車事業だ。現在のトヨタ自動車である。3代目、すなわち章男氏の父で現トヨタ名誉会長の章一郎氏は、住宅事業、トヨタホームを興した。4代目の章男氏が自らの〝一業〟に見定めたのが、ソフトウェア事業である。

トヨタは7月28日、トヨタの自動運転の取り組みに関わるソフトウェアの先行開発を行う「TRI‐AD(トヨタ・リサーチ・インスティテュート・アドバンスト・デベロップメント)」を、持ち株会社ウーブン・プラネット・ホールディングス(資本金200億円・予定)に衣替えし、事業会社としてウーブン・コア株式会社、ウーブン・アルファ株式会社をぶら下げる新体制への移行を発表した。代表取締役は、いずれもTRI-ADのCEOジェームス・カフナー氏が務める。新体制への移行は、ソフトウェアがモノづくり産業の生き残りのカギを握っているからにほかならない。

じつは、章男氏は、トヨタ自動車で社内起業の経験がある。2000年に立ち上げたガズーメディアサービス(現トヨタコネクティッド)がそれである。

章男氏はもともと、インターネットやソフトウェアを含むITが、自動車産業にもたらす影響に強い興味を抱いてきた。

もっとも当時は、「モノづくりの会社がITのようなお遊びに手を出すな」と社内から強烈な反発にあった。しかし、20年を経て、いまや、ITなしに自動車の未来が語れないのは、ご存じの通りだ。

「MaaS(モビリティー・アズ・ア・サービス)」の時代を迎え、自動車におけるソフトウェアの位置づけは、ますます重要になっている。例えば、「イーパレット」のような車両には、用途に合わせてカスタマイズしたソフトウェアを搭載するためのオープンなプラットフォームが求められる。

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