東京一極集中の日本に突きつけられる大きな難題 「デジタル田園都市国家構想実現会議」が担う重責
実は、山崎さんは、サントリー文化財団において、文化が地域をつくるという考え方のもとに、1979年に「サントリー地域文化賞」を設立しました。地域文化に光を当て、地域振興の力にしようとしました。その推進役を果たしてきた「サントリー地域文化賞」は、いまも続いています。ここらあたりの事情については、拙著『山崎正和の遺言』(東洋経済新報社)に記しました。
大平さんもまた、「文化の時代」を強く意識していました。経済中心の時代から文化中心の時代へと訴え、「都市に田園のゆとりを、田園に都市の活力を」というスローガンを打ち出しました。このとき、「地方の時代」という言葉が流行しました。東京一極集中によって力を失い、日本列島改造論による都市のコピーによって独自の文化が薄れていた地域に、光を当てたわけです。
地域にまつわる諸課題は単に地域だけの問題ではない
しかしながら、大平さんの死によって、「田園都市構想」は幕を閉じました。「地方の時代」「文化の時代」といったキャッチフレーズもトーンダウンしました。
以来、40年余り、地域再生といわれながらも、地域経済は停滞の一途をたどり、地域はどんどん衰退化しています。住民の高齢化、若者の減少、地域の過疎化は進むばかりです。東京一極集中は限界点に達しています。
こうした地域にまつわる諸課題は、単に地域だけの問題ではありません。日本がどうあるべきかを語るうえでの最重要課題であり、国家構想そのものといえます。
岸田首相は、「デジタル田園都市国家構想」を「新しい資本主義実現に向けた成長戦略の最も重要な柱」に位置づけています。はたして、岸田氏はどう地域と都市のあり方を描き、大胆に踏み込んでいくのでしょうか。単純に都市と地域の間をデジタルで結べば済む話ではありません。地域の独自性はもとより、両方を結ぶ絆に精神性、文化性がともなってこそ、「デジタル田園都市国家構想」は「新しい資本主義実現に向けた成長戦略」の柱として機能するはずです。その実効性が問われます。
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