東京一極集中の日本に突きつけられる大きな難題 「デジタル田園都市国家構想実現会議」が担う重責
山崎さんは、『柔らかい個人主義の誕生』の中で、「個人がこれまでよりもさらに個人的な姿勢で日常を生き、社会全体がより個人主義的な生活を強める条件が芽生えた」と、新しい個人の時代の幕開けを語っています。すなわち、産業化時代に形づくられたステレオタイプの生活ではなく、個人としてものを考え、人間関係を結び、生活を楽しむことを提唱しました。
それから40年。令和の時代になっても、個人の時代はやってきませんでした。
ところが、新型コロナによる世界的パンデミックを機に、人びとの生活は一変しました。テレワークが奨励され、在宅勤務が普及し、働き方が大きく変わりました。結果、価値観も変わりました。コロナ禍を奇貨として、山崎さんの提唱する“柔らかい個人主義”が現実になろうとしています。“個”の尊重が時代の主流になりつつあります。
デジタルで地域は活性化できるのか
と同時に、コロナ禍を機に、東京一極集中の流れにも、変化の兆しが見え始めています。要するに、デジタル技術を生かせば、地域でも都市にいるのと同じように仕事ができる。地域と都市の格差は縮小しつつあります。
岸田政権は、「地方からデジタルの実装を進め、新たな変革の波を起こし、地方と都市の差を縮めていくことで、世界とつながる『デジタル田園都市国家構想』の実現に向け、構想の具体化を図るとともに、デジタル実装を通じた地方活性化を推進する」としています。
今後、高速通信規格の5Gをはじめとする地域のデジタル基盤の整備に力を入れていく方針です。
ただし、忘れてはならないのは、地域にデジタルを実装すれば、人は地域に向かうのかということです。人びとの生活環境が地域から離れた以上、いま一度、人びとの関心を地域に向けるのは簡単なことではありません。
どうすれば、この課題を乗り越えられるか。カギとなるのは、地域の文化の魅力を高めることではないでしょうか。人びとをつなぐ絆として、地域と都市をつなぐ懸け橋として、文化を位置づけることです。
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