中学受験「いい大学へ行くため」の考えが危ない訳 歯止めがきかない中学受験過熱の背景

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「なぜ、中学受験するのか?」を考える必要がある(写真:Fast&Slow/PIXTA)

受験生の負担は3割から5割増し

中学受験が過熱している。特に最難関校を狙う受験生の負荷は年々増している。ある大手塾講師は「6年生の内容が、この数年で3割増しから5割増しになっている」といまの状況を危惧する。なぜそこまでして最難関校を目指さなければならないのか。

拙著『なぜ中学受験するのか?』でも詳しく解説しているが、背景には、東大合格者数ランキング上位校の顔ぶれに男子私立中高一貫校が多いことから、東大に合格するようなノウハウが、これらの学校の中だけに門外不出で蓄積されているのではないかという早とちりもあるようだ。しかしこれは、歴史的経緯の結果でしかない。

東大の合格者数は毎年約3000人。3000脚の椅子取りゲームに例えられる。どこかの学校が合格者を増やせばどこかの学校が減らす。これが大規模に起きたのが、1967年の都立高校による学校群制度導入だった。

1960年代までは、日比谷高校をはじめとする都立高校が東大合格者数ランキング上位を寡占していた。

東大合格者が一部の都立名門校にあまりに偏るのを解消する目的で、都立高校の入試に学校群制度が導入された。受験生が選択できるのは複数の学校で構成される「学校群」までで、仮に入試に合格しても、その学校群の中のどの学校に割り振られるかがわからないしくみにしてしまったのだ。

たとえば日比谷高校は三田高校と九段高校と同じ学校群になった。その学校群の入試に合格しても、日比谷高校に入れる確率は3分の1しかない。それを嫌って、特に学力上位層が、都立高校を避け私立中高一貫校を選ぶようになったのだ。

効果はてきめん。1970年代半ばにはトップ10から都立高校の名前が消えた。代わりに浮上したのが私立中高一貫校だった。先の大学入試改革しかり、いわゆる「ゆとり教育」の右往左往しかり、良かれと思って打った施策が見事に裏目に出ることがある。施策の利点ばかりを強調し、副作用を抑える策を講じていないからだ。

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