中学受験「いい大学へ行くため」の考えが危ない訳 歯止めがきかない中学受験過熱の背景

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東京都の学校群制度は1982年に廃止されたが、一度できてしまった流れは変えられなかった。1990年代には私立高校からの東大合格者総数が公立高校のそれを追い抜き、みるみる差を広げていった。「大学進学には私立のほうが有利」という印象が世に広まったのも、このころからである。

東大は昔からお金持ちが通う大学だった

東大生の出身家庭の年収の高さが話題になることがときどきある。そこから「私立に行くお金があるから東大に合格できるのだ」と解釈される言説も見かける。しかしこれも結論を急ぎすぎである。

教育社会学者の苅谷剛彦氏は『大衆教育社会のゆくえ』(中公新書)で、数々のエビデンスを示しながら、「私立の6年制一貫校の普及によって、東大入学の階層的な閉鎖性がはじめて作り出されたというわけではないのである。私立高校が優勢になる以前から、専門・管理職の子弟たちは、日比谷や西などの公立高校を経由して、やはり東大にたくさん入学していた」ことを明らかにしている。

私立が人気になるずっと前から、もともと東大という大学は、「上層ノンマニュアル(医師、弁護士、大学教授などの専門職や、大企業、官公庁の管理職、および中小企業の経営者など)」と呼ばれる特定階層の子弟が集まりやすい大学だったのだ。

東大合格者に男子校出身者が多い理由も単純だ。

もともと東大合格者に占める女子比率は異常に低い。2021年に初めて2割を超えたという程度。これが社会に根強いジェンダー・バイアス(無意識の性差別)によるものであると考えられる。だから女子校のトップ10入りは、1994年の桜蔭が初めてだったし、以後も桜蔭以外の女子校は一度もトップ10に入っていない。

一方で、前述の通り、1960年代半ばまでは都立高校が上位を寡占していた。実際の合格者の大半は男子ではあったが、形式上、これらはすべて共学校である。そのままであれば男子校が有利とはいわれなかったはずだが、学校群制度によって都立共学校がランキング上位から姿を消した。

都立共学校が勝手に沈んでいったあと、ふるいの上の砂利のような形で残ったのが、男子中高一貫校だったというだけの話である。

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