自動車「生産急減」が雇用と経済に落とす超暗い影 自動車大国が受ける痛みは経済の全身に広がる
自動車産業は世界経済を牽引する強力なエンジンだが、その生産が混乱したことで経済成長が危ぶまれ、自動車メーカーに稼ぎと雇用を頼る企業や地域に動揺が広がりつつある。
デトロイト、シュツットガルト、あるいは上海の完成車工場で組み立てられる車が1台減るごとに失業の危機にさらされる人が出てくる。フィンランドで鉄鉱石を掘っている鉱山労働者かもしれないし、タイのタイヤ工場で働いている労働者とか、フォルクスワーゲンのスロバキア工場でSUVに計器盤を取り付けている従業員かもしれない。自動車メーカーは部品不足や物流の目詰まりなどによって減産を強いられており、そのしわ寄せがこうした人々の生活に及んでいるのだ。
傷跡は何年も消えない
自動車産業は世界のGDP(国内総生産)の3%に相当する。自動車産業が盛んなドイツ、メキシコ、日本、韓国、あるいはアメリカのミシガン州といった国や地域では、その割合はもっと高くなる。自動車の減産が残す爪痕は深く、回復には何年もかかる可能性がある。
危機的な半導体不足によって、事実上すべての自動車メーカーが工場のシフトを減らしたり、完成車組立ラインの稼働を一時的に止めたりすることを余儀なくされている。
その衝撃は大きく、いくつもの国が景気後退に追いやられてもおかしくない。トヨタ自動車や日産自動車が本拠を置く日本では、部品不足のため9月の自動車輸出が前年同月比で40%減少した。自動車産業は日本経済にとって極めて重要な存在だ。
「成長と雇用にかなりの悪影響が出ている」と、パンテオン・マクロエコノミクスのチーフエコノミスト、イアン・シェパードソン氏は言う。
ポール・ジャックさん(57)は、そうした影響を最も大きく受けている1人かもしれない。ジャックさんはカナダのオンタリオ州テカムセ在住。大手部品会社マグナ・インターナショナルの1部門に勤務している。近くにあるクライスラーのミニバン工場にシートを納入している事業部だ。