自動車「生産急減」が雇用と経済に落とす超暗い影 自動車大国が受ける痛みは経済の全身に広がる

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クライスラーの親会社ステランティスがオンタリオ州ウィンザーの組立工場のシフト削減を計画しているという知らせをジャックさんが耳にしたのは、組立ラインで働いているときだった。クルーズコントロールシステムやエンジン管理など、さまざまな機能に欠かせないコンピューターチップの不足が原因ということだった。

工場で働く仲間たちは、自らの雇用が危険にさらされていることを理解し、「ものすごく暗いムードになった」とジャックさんは言う。ジャックさんの2人の子どもも同じシート工場で働いている。

最もハードな痛みにさらされている消費者

一方の自動車メーカーは値上げを進め、減産の影響を部分的に消費者に転嫁することで痛みを和らげている。フォード・モーターとゼネラル・モーターズ(GM)は10月下旬、第3四半期(7〜9月期)決算で売上高と利益がともに大幅に減少したと発表しながらも、通期の利益予想を上方修正した。メルセデス・ベンツのブランドを持つダイムラーの7〜9月期純利益は、販売台数が25%落ち込む中で20%の増益を記録した。メーカー希望小売価格の引き上げによって販売台数の低下を軽く補った形になる。

最もハードな痛みにさらされているのが、労働者や手頃な車を必要としている消費者だ。自動車メーカーは、不足する半導体を最も利益率の高いハイエンドな車種などに振り向け、比較的安価な車種の生産を後回しにしている。新車不足から、中古車の価格も高騰が続いている。

利幅の大きいフォード「F-150」やシボレー「シルバラード」といったピックアップトラックは「これまでどおり生産されている」と指摘するのは、デトロイトを拠点とするコンサルティング会社カーニーのパートナー、ラム・キダンビ氏。「反面、利幅の小さい車種(の生産)には影響が出ており、そうした車種の工場で働く人々にも影響が出るようになっている」と話す。

自動車産業の減産が経済全体に及ぼす影響を数字にするのは難しいが、たいへんな影響があることに疑いの余地はない。多くの業界が自動車メーカーに依存しているからだ。自動車メーカーは鉄鋼やプラスチックの大口顧客であり、部品会社の巨大なネットワークを支える存在でもある。さらに自動車工場の従業員が利用するレストランやスーパーの経営も、自動車メーカー頼みだ。

「ウィンザー工場が止まれば、誰もがその影響を受ける」と、ウィンザーでクライスラーのミニバンを組み立てている人々の労働組合ユニフォー・ローカル444の委員長、デイビッド・キャシディー氏は言う。

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