「サイボーグになって幸せです」61歳科学者の肉声

「ネオ・ヒューマン」著者独占インタビュー:前編

診断を受けた瞬間は、夫のフランシスがこの知らせをどう思うだろうかということが、まず頭をよぎりました。しかしその10秒後には、無意識のうちに脳の全シナプスが火を噴いていたのです。

「残りの人生をただ生き延びるだけなんて、まっぴらごめんだ! 僕はまだ、人生を満喫したいんだ!」とね。実に単純で、子どもっぽい発想です。しかし同時に、確かな科学に基づいた発想でもあります。

その何カ月も前に、私はある結論に到達していました。つまり、医療関係者や慈善団体、さらにはALS患者自身が何をどう言おうとも、今後のAIやロボティクスの発展によって可能になることを思えば、ALSを「最も残酷な病気」などと呼ぶのは、もはや時代遅れでしかないということです。

私にとってALSと診断されたことは、挫折とは程遠い出来事でした。むしろ、画期的な研究に乗り出すための、またとないチャンスだったのです。

この研究は、重度の障害を抱えたあらゆる人々を救うことになるでしょう。もちろん、単純に「老化」によって障害を負った人々も含めてです。これは私にとって、文字どおり「人生をかけた」研究になるはずです。

それにしても、死から逃げることがフルタイムの仕事になるなんて、まったく想像していませんでしたけどね。

サイボーグ生活は「元気はつらつ!」

――世界初のヒト型サイボーグになって、いまはどんな気分ですか?

ひとことで言えば、「元気はつらつ!」という感じですね。

私にとっては、これほど明白なメリットはありません。とはいえ、外から見れば、私のQOLが理想的ではないように思われても無理はないでしょう。

私の身体は、ずいぶん前に機能を失ってしまいました。いまや私の「脳」に適切な温度と湿度と栄養を提供するためだけに存在しているようなものです。

私はもはや、自分で動くことができません。普通のやり方で呼吸をすることも、食べることも、においや味をまともに感じることもできなくなりました。

手足に鋭敏な感覚が残っているにもかかわらず、何にも触れることができません。不要になった4本の手足が残っていることのデメリットは、あちこちにかゆみを感じるのに、どれひとつとして掻くことができないことです。病気の影響を受けていないのは、目と耳と脳だけです。

これほど不自由な日々ではありますが、私は自分のことを信じられないくらい幸運だと思っています。

革新的な研究のおかげで、これまでの私は新しいバージョンへとアップデートしつつあります。すべてが完了するまでには長い時間がかかるでしょう。しかし、私はすでに最先端のテクノロジーによって、自分の能力を変化させています。開花させていると言ってもいいでしょう。

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