拾った「火中の栗」、3年で再生できたワケ SOLIZE・古河建規社長に聞く(後編)

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三宅:全部を自動化するのは、やりすぎだと。人と機械の役割分担を見直したわけですね。

古河:そうですね。IT化、自動化が決して悪いわけではなくて、要は長期的な視点であるべき姿が描けているのかということです。人が判断して進化させていくべき領域は自動化はせず、逆に人の検討や、試行錯誤を促進するような形で構築する。そういう形で切り替えていきました。その結果、製品の進化、人材の成長に伴って効果を出し続けることができるようになってきました。

そうした新たな取り組みをまとめて、昨年、SOLIZEとして初めての書籍『ちえづくり』を、一橋大学の野中郁次郎先生に監修いただいて出版しました。組織で知恵を発揮して新たな価値を作っていく組織へと変革する、その方法をまとめています。

今はこの変革プロジェクトの依頼がとても増えてきています。従来の量産型の製造業のお客様だけでなく、いろいろな産業分野のお客様から相談が来るようになりました。ベテランの社員が重要な場面で何を考えているのかという、人の判断を可視化していき、それを基に新たな仕事のやり方を構築していく、この方法論はどんな分野でも求められています。医療現場の手術中の医師の判断を可視化していく取り組みなども行っています。

ただ、われわれSOLIZEはコンサルティング会社ではなく、エンジニアリング会社です。あくまで変革のエンジニアリングサービスということでお手伝いさせていただいています。今ではこの部門は約100人の事業部に成長していますが、申し訳ないことですが、人材が足りない状況が続いています。

三宅:変革エンジニアリングとコンサルティングのいちばん重要な違いはなんですか?

古河:コンセプトもシステムの導入も大事ですが、変革エンジニアリングでは、実際の業務でしっかり効果を出し、最終的には変革を継続的に回し続けるサイクルを作るところまでを取り組みます。新たな仕組みをどう使いこなすかとか、うまくいかないときにどうするかといったことを、お客様と一緒に一つひとつ地道にやっていきます。また、お客様がオーナーシップを高めて、次の変革を動かしていくための土壌も一緒に作っていきます。地に足がついている感じです。だから、お客様から「今後の戦略を教えてほしい」と言われることはあまりなくて、「トップは方向性を出しているのだけど、それが実行できない」、という悩みに応えることが多いですね。

三宅:45日を45時間に短縮したことから、変革エンジニアリングへ発展していって、みなさんが活躍されているわけですね。今では100人の事業部になって、しかも利益を出しているとは理想的な進化ですね。

古河:そうですね、私ではなく、その後に入社した社員がいろいろなところでキーマンになっています。たくさんのリーダーが出てきていることが何よりうれしいです。

情熱を枯らさないために

三宅:古河さんは以前、民事再生の間、一度も苦しいと思ったことがないとおっしゃっていましたね。

古河:苦しいというより、よし、やることがたくさんあるから頑張ろう、という感覚です。

三宅:普通はそうは思えないと思いますよ。

古河:僕は、毎日が誕生日だと思っているのです。今年45歳なのですけど、I’m 45 years oldではなく、I’m 16300 days oldのほうがいい。なぜ地球が1回転するごとにカウントしないんだろうと。毎朝生まれてリセットされて、夕方になると、「やばい、今日誕生日なのに大したことしてないな、オレの誕生日が終わっちゃうよ」と思うのです。

三宅:毎日が誕生日……。本当に不思議な人ですねぇ(笑)。社員の方は「古河さんのまねなんてできない」とおっしゃっていましたが、ご家族からはどう思われているのですか?

古河:いつも楽しそうね、みたいな感じですね(笑)。会社が厳しい頃、家族へはその話はあまりしていませんでしたが、薄々知っていたようです。まったくそんな素振りが見えないと言っていましたね。

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