飲み会解禁で憂鬱な人も「パワハラと業務」の境目 業務上必要な「接待」であれば残業代が発生する

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会社が従業員に飲み会への参加を強制した場合、法的には、厚生労働省の掲げる「パワハラ6類型」のうち、「身体的な攻撃」「精神的な攻撃」「人間関係からの切り離し」「個の侵害」といった大半のパワハラ類型に該当する可能性があります。

「身体的な攻撃」に関しては、流石に少ないとは思いますが、力ずくで飲食店に連れて行ったり、飲酒を固辞する従業員に無理やり飲ませるといった行為が該当します。

「精神的な攻撃」に関しては、威圧をして無理やり飲み会に参加をさせることや、飲み会に参加しないことに対して「協調性が無い」とか「裏切り者」といったような人格を否定するような発言をすることが該当します。

「人間関係からの切り離し」に関しては、飲み会に参加しなかった従業員を無視するとか、冷遇するといったことが該当します。

「個の侵害」に関しては、飲み会への参加を強要すること自体が、従業員の私的時間への侵害であるということです。

「強制参加はパワハラです!」なんて言えない

このように、飲み会への参加強制は、パワハラに該当する要素が多々含まれています。

しかしながら、教科書的にはパワハラに該当するといっても、飲み会への参加が事実上強制されている職場において、上司や同僚に対し「飲み会への強制参加はパワハラですから私は参加しません!」と宣言することは非常に困難であると思います。

現実的な対応方法としては、育児や介護など早く家に帰らなければならない事情が実際にある場合には、そのことを正直に伝えるべきでしょう。

また、飲み会への参加強制が会社全体の社風ということではなく、特定の上司の問題ということであれば、社内のコンプライアンス窓口や人事部などに相談をすることが考えられます。内部統制が働いている企業であれば、当該上司への注意喚起や、状況によっては部署異動なども検討をしてくれるはずです。

会社全体の社風として飲み会への強制参加が当然となっているような場合には、自分が経営者や重役でない限り、その社風を変えることは難しいですから、会社と対立して心身を消耗したり、我慢して飲み会に参加を続けるよりは、転職を検討するほうが前向きな行動といえるかもしれません。

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