国学院大学野球部、15年越しのブランド戦略 基礎から教える独自のメソッドで開花

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ブランドが光り輝くのは、身に付けている人が本質的な価値を持っている場合だ。ファストファッションで身を固めた女子大生がブランドのバッグや財布を持っていても、価値があるとされる小物はトータルバランスの中で浮いてしまう。

そしてブランド戦略で重要なのが、周囲にどんなイメージを抱かせるかだ。

13年の日本選手権で初優勝を飾った新日鐵住金かずさマジックの鈴木秀範は、国学院大学について「ちゃんとした教え方をしている」と話していた。「人間性が変わらないと、取り組み方が変わらないことを選手に理解させ、そういう教え方をしている」ということだ。

社会人チームとのパイプが太くなると同時に、鳥山によると近年、「国学院大に行けば基礎から鍛えてくれる」と進路に選ぶケースが増えている。国学院大は長らく東都2部に低迷していたが、プロや社会人で活躍し、本質的な人間力を持っている人材を輩出することでブランド力を高めていった。

ブランド力は人づくりから

そうして甲子園経験者が集まるようになり、彼らをきちんと育てることで結果を残していく。昨秋、今春と2シーズン連続で最後まで優勝を争い、今や他校から追われる存在となった。確かな中身があるからこそ、周囲に輝いて見えるブランドになったのだ。

だが鳥山は、「まだまだ新興です」と控えめに言う。

(写真:国学院大学硬式野球部 提供)

「ここから最低10年でしょうね。1部でプレーし続けて、何回優勝できるか。僕は小久保裕紀、井口資仁世代で、現役の頃は青山学院が強かった。でも50、60代の方は『俺たちの頃、青学は弱かった』と言うのです。当時の青学は東都の2部、3部にいました。でも、僕らにとっては強い青学。20年勝ち続けているから、そうなっているわけです」

栄枯盛衰はスポーツも一般社会も変わらない。筆者は高校生の頃、夏休みに代々木ゼミナールの人気講師の授業を受けに行った。「スター講師の授業が受験に役立つはず」と思ったのは、代ゼミのブランド力だろう。それを肌で知っているだけに、今回の大幅縮小には驚いた。

ブランドの人気は、それほど移り変わるものだ。勢いや戦略性だけで消費者の心を一時的につかんでも、本質を欠いていれば、いずれ見向きもされなくなる。だからこそ、幹が太く、長く茂っていられる人材を育てることが不可欠だ。そうした個々が組織の価値を高めていくのは、スポーツも企業も同じだろう。

鳥山が言う。

「国学院の歴史として、『もっと卒業生がプロや社会人で活躍できるように』とつねに追求してやっています」

組織の価値形成は、まずは人づくりから始まる。それを地道に実践してきたから国学院大はブランド力を高め、結果を残し始めているのだ。

=敬称略=

中島 大輔 スポーツライター

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なかじま だいすけ / Daisuke Nakajima

1979年埼玉県生まれ。上智大学在学中からスポーツライター、編集者として活動。2005年夏、セルティックに移籍した中村俊輔を追い掛けてスコットランドに渡り、4年間密着取材。帰国後は主に野球を取材。新著に野球界の根深い構造問題を描いた「野球消滅」。「中南米野球はなぜ強いのか」(亜紀書房)で第28回ミズノスポーツライター賞の優秀賞。NewsPicksのスポーツ記事を担当。文春野球で西武の監督代行を務める。

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