心技体を鍛えて世界で戦える選手に 体を鍛え、ゴルフの質を上げ、精神を健康に保て

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窓際に置いてある蘭の花がすこぶる元気がいい。4年経つが、今年はこれまでよりカルシウムを多く含んだ水をまいていたせいか、花びらの張りがよく、白とピンクが色鮮やかだ。

さて女子ゴルフツアーは全部で37試合、7月から後半戦に突入している。毎年のように若い選手が台頭し、初優勝に続々名乗りを上げている。賞金ランキング上位50人は翌年度のシード権を獲得できるが、そろそろその獲得額が気になる頃でもある。賞金総額が昨年度より増加しているので、今年のボーダーラインは2000万円に届きそうな勢いである。また、これまで二人のアマチュア選手がツアーで勝っている。4月レギュラーツアーで勝みなみ選手が15歳で、下部ツアーのステップ・アップ・ツアーでは7月、堀琴音選手が18歳で優勝している。現在トーナメント登録しているプロは444名。日本女子プロゴルフ協会のプロテストは7月末に最終テストが行われ、毎年二十数名が合格して入ってくる。国内外のプロ選手に加え実力を備えたアマチュアも台頭してきた。これまでになく新陳代謝のスピードが増している。

そういう中、1年でも長く現役選手として活躍するには、どうしていくことが必要になるのか。それは体を鍛え、ゴルフの質を上げ、精神を健康に保つことが大事となる。まさに心技体。基本はここにある。

まず体。長いシーズンを乗り切れる体でなければ持てる技術も出し切れないし、気持ちも続かない。体力はすべてのベースである。一昔前はシーズンオフにだけ体を鍛えたが、平成になりタイガー・ウッズが出現すると、アスリートゴルファーという言葉とともに体の鍛え方に関心が集まった。国内外を飛び回るプロは体力がないと息切れするので、シーズン中も体を鍛えながらツアーを転戦することが不可欠になった。今では、国内ツアーで活躍する選手たちも走り込みやトレーナー指導による体力強化を行う姿が見られる。

そして肝心なゴルフの質。毎年同じことをやっていたのでは、ほかの人に抜かれていく。7割は地道に基本を押さえる練習をするのだが、3割は新しい技術習得や、技術の質の向上を図る。優勝を重ねる選手ほど、スイングの細部にわたる詰めを怠らないものだ。

さらに精神の健康。物事を悲観的に考えるのか、積極的に考えるのかでは、同じ実力でも大きな違いとなって結果に表れる。

次から次へと新しい力が台頭し、グローバル化されたツアーでは、国内にいながら世界での競争にさらされているのと同じである。先の全英女子オープンでは、日本選手最多の8人が予選を通過し、日本ツアーで活躍する選手がここ数年優勝争いに加わり始めた。世界を意識し、地道に基本を押さえたうえでのさらなる工夫で、個々の才能が開花すると信じている。

週刊東洋経済 8月2日号より

小林 浩美 プロゴルファー

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こばやし ひろみ

1963年福島県生まれ。89年にプロ初優勝と年間6勝を挙げ、90年から米ツアーに参戦、4勝を挙げる。欧州ツアー1勝を含め通算15勝。現在、日本女子プロゴルフ協会(LPGA)会長。所属/日立グループ。

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