「このままでは国家財政破綻」論は1%だけ間違いだ 矢野財務次官と筆者との「決定的な違い」とは?

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矢野氏の論文は「与野党ともにバラマキばかりだ。あたかも財源が無限にあるかのような振る舞いで、いずれの政策も財政破綻をもたらす」という警告を発することが目的であり、「なんとかぎりぎりのところで踏ん張って、財政破綻させないようにしてくれ」という悲痛な叫びである。

一方、私は「政治家などこのフィールドにいる人々は、いつか財政破綻してしまうかどうかには関心がない。せいせい数年先のことしか考えていない」という認識をしている。そして、たぶん矢野氏よりも私のほうが正しい。結局、どんな警告を発しても無駄なのである。

そもそも「バラマキだ!」と批判しても、まったく無意味なのである。なぜなら、政治の世界の人々は「バラマくぞ!」と積極的に主張しているのであり、まさにバラマキ合戦をすることを意図しているからだ。しかも、今回は、多くのネット評論家、有識者、さらに専門家であるエコノミストたちの中でも多くの人々が、バラマキを支持し、画期的なバラマキの具体策を提案しているのである。

「これまでは中途半端で思い切りが足りなかった」というのが、このような多数派の主張である。バラマキが大規模であればあるほど素晴らしく、思い切りのよい優れた政治家とみなされる。財務官僚の警告などにひるまない、強い政治家ほど絶賛されているのである。

バラマキの責任は国民にある

ここが私と矢野氏の決定的な意見の違いである。矢野氏は、財政の真実の姿を国民に直接伝え、理解が広がれば、国民は賢明な判断をするだろうと信じている。私は信じていない。バラマキは、国民こそが(すべてではないが多数派が)望んでいるのである。

政治家は馬鹿ではない。勝つために政策を主張する。公約をする。与野党そろってのバラマキ主張は、票を取るためには正しい戦略なのである。

したがって、バラマキの責任は政治家にあるのではなく、国民にある。つまり、批判すべきは、バラマキを受けて喜んでいる国民、有権者たちだ。政治家は飯のために、権力を取るために、それに迎合しているにすぎないのだ。

また政治家を責めるぐらいなら、もっと糾弾されるべきは、財政出動、減税を礼賛、推奨している、有識者、エコノミストたちである。彼らこそが、国を滅ぼす戦犯なのである。

彼らを糾弾するためには、「日銀が国債を買えば大丈夫だ」「国全体のバランスシートは問題ない」」「MMT(現代貨幣理論)は有効だ」「インフレが起きてないから、むしろインフレを起こすために破綻しかねないぐらいの財政出動をしろ」といった類の議論がいかに間違っているかを書く必要がある。だが、それは別の機会にしよう(本編はここで終了です。次ページは筆者が週末のレースなどについて語る競馬コーナーです。あらかじめご了承ください)。

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