「このままでは国家財政破綻」論は1%だけ間違いだ 矢野財務次官と筆者との「決定的な違い」とは?

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また、今回のコロナ危機でわかったことは、医療制度や組織構造自体の効率も悪く、さらに医療に関する財政支出の効率性が悪い。両者が相まって、先進国でもかなり大きな財政支出がなされているのに、財政支出の効果が薄かったという分析がシンクタンクなどによりなされている。

さらに、旅行業などへの支援に見られるような一連のコロナ関連の経済支援などの政策では財政支出よりもさらに効率が悪かった、とシンクタンクなどは指摘している。日本の場合、感染者数、死亡者数が諸外国に比べて非常に小さく、一方で大規模な財政支出を行っても一向に景気が上向かなかったことなどを考えると、財政支出の効果の国際比較としては、極端に効率が悪いということになる。

政治側に借金返済の意思があるのか

このように数多くの理由により、日本の財政問題は困難な状況にあるのだが、しかし、7つ目の問題は、いや、真の最も致命的な問題、日本財政の最大の問題は「政治に借金返済の意思がまったくない」としか思えないことに尽きる。

日本政治は、1990年以降、一度も借金を減らそうとしたことがあっただろうか。「プライマリーバランス」(税収等で政策的経費を支払えているかどうか)の確保ですら1980年代のバブル崩壊以後、実現したことはないが、「プライマリーバランスを目指す」といっても、それでも借金は利子の支払い分増え続けるのであり、プライマリーバランスというのは、第1歩にすぎない。

本来はその先が必要なのであるが、それを目指したことがない。つまり、借金を減らす気がなければ、もちろん減るはずがない。そして、前述の第1から第6の理由により、歳出は増え続けることは必至である。支出は増え続け、歳入を増やす意思がないとなれば、破綻する以外の結果はありえない。

だから「日本財政は破綻するかどうか」ではなく「破綻するのがいつなのか」ということが問題なのだ。これはバブルの構造と同じである。

実は上記の1から6の要素は、矢野論文でも示されている。矢野氏と私の実質的な違いは、第7の理由、財政破綻が実現してしまうかどうかの致命的な点についてである。

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