アパレル名門「ワールド」の構造改革は成功するか コロナ直撃企業のための財務的な危機回復方法

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その意味では、大きな環境変化に柔軟に対応するためには、日頃からある程度強い財務体質を保持することも1つのポイントになるといえそうである。

ただ、構造改革を発表し、実行しているワールドは、財務面から考えると、企業の再生に向けてまさに正攻法と考えられる施策を打ち出している。あらためて、その内容を確認しながら、危機への対応策について考えてみたい。

まずワールドは、新型コロナウイルスの感染拡大に伴う2020年3月頃からの業績の急速な悪化の中で、短期を中心とした借入金の積み増しによる現金預金の確保を行っている。実際に2020年3月末時点で781億1800万円であった借入金(流動と非流動の合計)が、2020年6月末時点では931億7700万円へと、150億5900万円増加している。また従業員については、一定数を抱え、生産性の向上を図ることで、社内でのノウハウ蓄積などいろいろなメリットが生み出され、雇用の確保や人材育成といった社会貢献にもつながる。

それによって、第1四半期(2020年4月~6月)の四半期利益が△24億2800万円の大幅な赤字となり、営業活動のキャッシュフローが△70億3100万円と大きなマイナスになったにもかかわらず、2020年6月末の現金預金の金額は211億1400万円と、2020年3月末の202億4200万円を上回る水準を確保している。

このように、先が見えないような危機に直面した場合には、借入金等によって手元に一定の資金を確保することが重要であり、このワールドの動きはまさに正攻法だったといえる。その後、ワールドはほかの施策を実行に移すのと並行して借入金の金額を徐々に減らしており、2020年12月には2020年3月末時点を若干上回る水準の797億500万円まで減少させている。

「危機からの回復」ワールドの構造改革プランを検証する

次に、ワールドは構造改革のプランを発表し、実行に移している。具体的には、構造改革プランを2020年8月5日と2021年2月3日の2段階で発表し、実行しているが、その中で、①ブランドの一部(12ブランド)の終息と、一部の事業集約・移管の実施、②店舗の撤退(841店舗)、③本部を中心とした人員削減(434人)、④テレワークや退職者の増加に伴うオフィスの集約、⑤やらない業務の洗い出しと決定といった施策を行っている。

これらは、資産の圧縮やコストの削減につながり、急激な売り上げ減少の中で、資産やコストなどの規模をいったん縮小し、事業規模を縮小して事業が継続できる状態にしていくための施策であり、まさに正攻法といえる。

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